2026年3月16日配信
防災xデータの現在地<創業2年経過のHi-Lights>
登壇:山田 梢 株式会社Hi-Lights 代表取締役
(所属や役職は配信当時の情報となります)
法人向け屋内位置情報「Beacapp Here」を、単なる位置情報ではなく“ポジショニングデータ“として人・モノ・ロボットまで可視化する方針を説明。2014年開始の基盤を2024年4月に刷新し、運用・保守・セキュリティ負荷と継続リスクを低減、不安も解消。全国574拠点で導入(オフィス中心に病院、研究所、工場・倉庫、店舗まで拡大)。カート等の所在可視化や移動・滞在のレポートで業務効率と施策効果を測定し、100名で月271時間、700名で月2520時間削減などを実現した事例を紹介します。出社状況の把握でストレス軽減や離職率改善の可能性にも言及。地震速報連携で拠点・フロア人数を通知するBCP機能も紹介します。
岡村さんの前回エピソードはこちら
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導入実績5年連続No.1を支えるシステム基盤の刷新
法人向けの屋内位置情報サービス「Beacapp Here(ビーキャップヒア)」を展開する株式会社ビーキャップは、導入社数および利用者数において5年連続ナンバーワンの実績を誇る企業です。同社は2024年4月、サービスのさらなる拡大と安定稼働を目指し、システム基盤の全面的なリニューアルを実施しました。このリニューアルは、2014年のサービス開始当初から積み上げてきたAWS上のシステムを、最新の技術スタックを用いて再構築したものです。長年の運用を経て、ユーザー数の増加に伴うバックエンドの負荷や運用コストの増大、セキュリティ要件の高度化といった課題に直面していましたが、今回のリプレイスにより、これらのリスクを解消しました。代表取締役社長の岡村正太氏によれば、リニューアルから約1年が経過し、システム稼働の安定性は飛躍的に向上したといいます。以前はサーバー負荷の急上昇に神経を尖らせる場面もありましたが、現在は万全の基盤が整ったことで、さらなる大規模ユーザーの受け入れが可能な状態となっています。この基盤強化は、単なる技術的な更新に留まらず、顧客が安心してサービスを継続利用するための重要な投資であったと強調されています。
位置情報からポジショニングデータへの概念拡張
現在、同社のサービスは北海道から沖縄まで全国574拠点で導入されています。その内訳はオフィスが半分以上を占めるものの、近年では病院などの医療施設、研究所、工場、倉庫、店舗など、多様な現場へと広がっています。このような活用の広がりに伴い、ビーキャップでは単なる「位置情報」という枠組みを超え、人や物、ロボットの状態を司る「ポジショニングデータ」という概念を提唱しています。これは「Positioning Data as a Service(PDaaS)」とも呼べるもので、現場の業務負担を解決するためのデータ活用を目指しています。具体的には、人の位置把握だけでなく、車椅子やベビーカー、検体といった「物」の位置をリアルタイムで可視化するニーズが高まっています。例えば熊本空港の事例では、広いフロア内でカートがどこに何台あるかをマップ上で把握することで、スタッフの移動時間や移動距離の削減、最適な配置検討に役立てられています。また、現場における「探し物をする時間」や「在庫を数える時間」といった目に見えない非効率を、デジタルデータによって解消する取り組みが進んでいます。
導入効果の可視化とストレスフリーな職場環境の実現
位置情報データの活用において、多くの企業が直面する課題が「導入による費用対効果(ROI)」の明確化です。ビーキャップでは、カスタマーサクセスチームを中心に、導入効果を数値化してフィードバックする体制を整えています。例えば、100名規模のユーザーでは月に271時間、700名規模では月に2,500時間以上の「人を探す時間」が削減されているという具体的なデータが示されています。このように削減効果をデジタルで記録し、定期的にレポートすることで、総務や人事部門といった多忙な管理者が効果を実感しやすくなり、他拠点への展開といった好循環を生んでいます。また、岡村氏は位置情報活用がもたらす心理的メリットについても言及しています。フリーアドレスやハイブリッドワークが普及する中で、「誰が今日出社しているのかわからない」という状態は、従業員にとって小さくないストレスとなります。位置情報を共有し合うことで、対面コミュニケーションのきっかけを掴みやすくなり、無駄な確認作業が減ることは、職場全体のストレス軽減に寄与します。このストレスフリーな職場環境の実現が、最終的には離職率の低下や従業員満足度の向上といった、経営的な重要指標の改善に繋がることが期待されています。
BCP対策への活用と今後の展望
今後の展望として、ビーキャップは安心・安全という文脈でのデータ活用を強化しています。その象徴的な取り組みが、地震情報と連携したBCP(事業継続計画)対策支援サービスです。大規模な地震が発生した際、どの拠点のどのフロアに誰がいるのかを即座に把握し、管理者に通知する仕組みを構築しました。災害時の点呼や安否確認において、正確な母数を把握することは極めて重要です。日常的な業務効率化のツールとしてだけでなく、有事の際の安全管理の基盤としても、ポジショニングデータの価値を高めていく方針です。同社は、今後も利用できる場所を拡大し、AIとの連携なども視野に入れながら、現場の課題を解決するポジショニングデータサービスとしての進化を続けていきます。
ステークホルダーとの信頼構築とコミュニティの重要性
防災という公共性の高い領域では、サービスの内容以上に「誰と作るか」という信頼関係が極めて重要です。国、気象庁、民間大手企業といった主要なプレイヤーとネットワークを築き、現場が真に必要としているニーズを吸い上げながら、共に社会実装を進めていく姿勢が不可欠です。また、ボランティア管理のような、自治体が現場で直面している具体的なペインポイント(紙ベースの管理による煩雑さなど)をシステムで解決することも、経済循環を促す一助となります。
まとめ
今回の対談を通じて、屋内位置情報サービスが単なる「場所の特定」という機能を超え、企業の経営基盤を支える重要なデータプラットフォームへと進化していることが明確になりました。システム基盤の刷新により、574拠点を超える大規模な運用にも耐えうる安定性を確保したことで、オフィスだけでなく医療や物流といった多様な現場での導入が加速しています。特に、探し物や移動時間の削減といった直接的なコストカット効果に加え、従業員のコミュニケーション活性化やストレス軽減といった心理的な価値が、現代の働き方において極めて重要であることが示されました。今後はBCP対策などの安全管理面での活用も深まり、ポジショニングデータは企業の生産性と従業員の幸福度を両立させるための不可欠なインフラとなっていくことが期待されます。
