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2026年2月2日配信

中小企業/開発会社への生成AI導入最前線

 

登壇:
米澤 聡 Fire Cracker株式会社 代表取締役

(所属や役職は配信当時の情報となります)

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札幌のITコンサル企業・ファイヤークラッカー株式会社の米沢氏をゲストに迎えます。中小企業の業務効率化支援を軸に、創業当初のSaaS導入から、現在は生成AI活用の推進へと事業がシフトした背景を紹介。議事録作成やサポート業務の自動化に加え、特に“システム開発会社向けAI推進“が大きなテーマとして語られます。生産性は領域によって3〜10倍も狙える一方、普及の壁は「使い方の習得」と「組織への定着」。電卓からExcelへの移行になぞらえ、プロンプト設計と最終検証(味見)の重要性、倫理・人文学の価値、さらに地方×AIがもたらす未来と、ライブイベント事業への展望まで深掘りします。

 

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SaaSから生成AIへのパラダイムシフト

 

米澤氏がFire Cracker株式会社を設立したのは2021年4月、コロナ禍の真っ只中でした。以前は東京の渋谷で共同経営者兼CTO(最高技術責任者)として活動していましたが、リモートワークの普及を機に、故郷である札幌へ戻り起業を決意しました。

創業当初はSaaS(Software as a Service)の導入支援を主軸としていましたが、2023年以降、生成AIの劇的な進化を目の当たりにし、事業の方向性を大きく転換しました。米澤氏は、2010年代後半から続いたSaaSの流行を振り返り、現在は「ある程度SaaSの競争が終わり、領域が定まってきている」と分析しています。かつてはSaaSが埋めていた業務の穴を、現在は生成AIが直接埋めることができるようになり、大きなパラダイムシフトが起きていると指摘します。
 

システム開発における工程2から9の自動化

 

現在、同社が最も注力しているのは、システム開発会社やエンジニア組織に対する生成AIの導入支援です,。米澤氏は、現在のシステム開発の状況を、電卓からExcelへ移行した当時の会計業界になぞらえて説明します。Excelが導入された当初、電卓よりも圧倒的に効率的であるにもかかわらず、普及には時間を要しました。現在のシステム開発現場における生成AIも、まさにその過渡期にあるといいます。

具体的な変化として、米澤氏は開発工程を1から10の段階で表現します。これまでは人間が1から10までの全工程を担ってきましたが、AIの活用により、人間が担うのは最初の1(指示)と最後の10(チェック)だけになると予測しています。その間の2から9の工程、すなわち実際のコーディングや微調整はAIが代替します。

この変化を米澤氏は料理に例えて解説します。料理人がどのようなカレーを作りたいかを決め(工程1)、最後に意図した味になっているかを味見して確認する(工程10)ことが重要であるのと同様に、エンジニアリングにおいても、正しい指示を出すプロンプトの技術と、出力された成果物が正しいかを判断する能力が不可欠となります。


労働人口減少とエンジニアに求められる新たな素養

AIの普及により、エンジニアの生産性は3倍から5倍、領域によっては10倍に跳ね上がるといいます。これは、深刻な労働人口減少に直面する日本において、人手不足を解消する強力な手段となります。

一方で、単純な作業に従事するエンジニアの需要は減少していくことが予想されます。米澤氏は、これからの時代に求められる人材として、計算機科学(コンピューターサイエンス)の知識以上に、人文学、歴史、哲学、倫理といった分野の重要性が増すと述べています,。

AIにどのような価値を創出させるべきかを考える力、すなわち美意識や倫理観を備えた人材こそが、新時代のエッセンシャルワーカーになると米澤氏は予測します。Googleなどのグローバル企業がこうした基礎教養を持つ人材を採用し始めているという動向も、この流れを裏付けています。

地方の逆襲:AIが変える北海道の価値

 

札幌に拠点を置く米澤氏は、生成AIの登場が地方に大きなチャンスをもたらすと確信しています。これまで頭脳は都市部に集中する傾向にありましたが、生成AIによって頭脳労働が代替・平準化されることで、都市と地方の格差が縮小します。

その結果、第1次産業や第2次産業の資源が豊富な地方の重要性が相対的に高まります。北海道のような資源豊かな地域において、AI × 地方という掛け合わせは、これまでにない新しいビジネスの形を生み出す可能性を秘めています。

今後の展望とAIができないことへの挑戦

 

Fire Cracker株式会社の長期的な展望として、米澤氏は「AIにできることをやり尽くした先に、AIにできないことをやる」というユニークな軸を掲げています。具体的には、米澤氏自身が愛好するロックバンドやライブイベントの運営など、人間ならではの熱量や体験を重視する事業への展開を見据えています。

このチームでライブイベントをやりたいという共通の目的を持ちながら、ITコンサルティングという高度な業務を遂行する。そのような、スキルの追求と人間的な情熱が共存する組織作りを目指しています。

まとめ

 

今回の対談を通じて、生成AIが単なる効率化のツールに留まらず、システム開発の構造そのものや、働く人間に求められる資質、さらには地方の経済価値までも変容させていく姿が浮き彫りになりました。

米澤 聡氏が提唱する「工程1と10に集中する」という考え方は、開発者のみならず、あらゆるビジネスパーソンにとって示唆に富むものです。AIという強力な頭脳を使いこなしながら、人間ならではの美意識や倫理観を磨き、地方から新しい価値を届けていく。Fire Cracker株式会社が札幌から発信するこの挑戦は、これからの日本のビジネスシーンにおける一つの指針となるでしょう。技術の進化を恐れるのではなく、それを前提とした新しい人間らしさの在り方を模索する時期に来ているのかもしれません。

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