2025年11月17日配信
POIと生成AIの関係性〜そしてジオフェンスPOIへ! byデジタルアドバンテージ
登壇者:小川 誉久
(株)デジタルアドバンテージ 代表取締役
(所属や役職は配信当時の情報となります)
チェーン店舗データサービス『ロケスマ』を運営するデジタルアドバンテージ小川氏と、生成AI時代のPOIデータ活用について語りました。ロケスマは無料のチェーン店検索サービスで、約1万チェーン・114万店舗のデータを毎日クローリングし、人手で緯度経度を付与することで高品質を維持。近年は学習塾や家族葬、買取店などニッチなカテゴリ需要も増加。生成AIがPOIを出力する脅威に触れつつ、日本企業が持つデータ資産の重要性についてお話頂きました。新たな取り組みとして、店舗を点ではなく建物ポリゴン(ジオフェンス)として整備し、人流データや公式アプリと組み合わせることで、来店分析やリアルタイムなプロモーション最適化、AIへの高精度な入力データとして活用する新たな構想を教えて頂きました。
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ロケスマが誇る高精度POIデータとビジネス基盤
ロケスマは、地図ベースでチェーン店舗を検索できる無料サービスです。そのビジネスは、サービス内で表示する高精度な店舗データの提供によって成り立っています。
データの規模と品質維持へのこだわり
・データ規模: 2023年10月30日時点で10,705チェーン、113万8,510店舗のデータを収集しています。
・鮮度と更新頻度: すべてのデータをWebクローリングにより毎日収集し、最新情報への更新を徹底しています。
・手動による品質管理: 日々発生する新規店舗(1日あたり100〜500店舗)について、緯度・経度の設定をジオコーディングに頼らず、人間が地図を見ながら手動で実施しています。これにより、高いデータの正確性を維持し、他社との差別化を図っています。
・用途と提供実績: Apple Maps、LINE Yahoo! JAPAN、KDDIロケーションアナライザーといった大手プラットフォームへのデータ提供実績があります。また、主要な収益源は、チェーン店の店舗開発部門が競合調査などで利用するデータ提供です。
・広がる需要: スーパーやコンビニといった従来の小売業に加え、近年では学習塾、家族葬儀場、買い取り店など、ニッチなカテゴリーでのデータ需要が顕著に増加しています。
生成AI時代におけるデータ戦略と警鐘
小川氏は、ChatGPTのような生成AIが特定のPOI情報を出力し始めている現状を、データプロバイダーにとっての大きな脅威であると認識しています。
生成AIに対する認識と課題
・脅威の具体化: AIに「最寄りのコンビニをリストアップして」と依頼すると、緯度・経度付きで情報が出力されるなど、POI情報の取得が容易になっています。
・現在の品質: 現時点では、AIが出力するPOIデータには「完全性、正確性、網羅性」の面でビジネス利用に足る品質がないものの、今後データ品質が向上する可能性を警戒しています。
・データ資産の保護: AIクローラーによる不用意な学習を防ぐため、データ提供時のインターフェースやデータ露出方法について顧客と協議し、自社の「財産」であるPOIデータを守るための注意を払っています。
日本企業のデータ資産の重要性
AI開発において最も重要になるのは「データ」であるとし、長年世界をリードしてきた日本企業が持つ、製造業などの現場に蓄積された質の高いデータが、AI時代における日本の大きな強みになると強調。これらの貴重なデータ資産が、AIに不用意に奪われたり、活用されずに埋もれたりしないよう、企業全体での意識と対策の必要性を訴えています。
次世代の位置情報分析基盤「ジオフェンス」への進化
ロケスマは、従来の「点」情報のみの提供から脱却し、「建物形状の多角形データ(ジオフェンス)」へと進化させる新たな取り組みを開始しています。
ジオフェンス導入の目的とメリット
・高精度な人流分析: これまでの点データでは不可能だった、「顧客が店舗の建物内に実際にいるか」を正確に判定できるようになります。
・滞在分析の実現: 人流データと組み合わせることで、顧客の滞在時間や来店/非来店といった、より深い分析が可能になります。
・AIへの高品質な入力: 近くを通り過ぎただけの情報ではなく、店舗への「来客」という明確な結果をAIへの入力データとすることで、AIの精度向上に大きく貢献します。
・整備状況: 商業施設のジオフェンス化を完了し、ロケスマWeb版で公開を開始。現在は主要コンビニ3社を進めており、今後はスーパー、ドラッグストアなどの小売セクターへ拡大予定です。
ジオフェンスが実現するリアルタイムな活用
・プロモーションの最適化: 全国的なプロモーションの効果をリアルタイムに来店データから分析し、その結果に基づき、翌日から広告メッセージやクリエイティブを自動的かつ即座に変更・最適化する仕組みの構築に繋がります。
・公式アプリ連携: スマートフォンアプリがジオフェンスを利用して顧客の店内滞在を正確に把握し、自動で店内モードに切り替えたり、来店ポイントを付与したりするなど、顧客体験とマーケティング効果の最大化が期待されます。
まとめ:データの品質と深度がAI時代の鍵
デジタルアドバンテージ社のロケスマは、徹底した手動での品質管理と日次更新により、生成AI時代においても代替不可能な高精度POIデータを提供し続けています。
さらに、「点」から「ジオフェンス」への進化は、人流データ分析や公式アプリ連携におけるリアルタイムな活用を可能にし、AIが活用するための高精度な「場所」の情報をインプットとして提供する戦略です。この取り組みは、単なるデータの提供にとどまらず、データの品質と活用深度で差別化を図り、ロケーションビジネスの可能性を大きく広げるものです。
