2025年10月20日配信
ロケーションプライバシーとAI by Privacy Tech @近畿大学セミナー
登壇者:
株式会社プラバシーテック
代表取締役 山下 大介
(所属や役職は配信当時の情報となります)
2025年7月14日に開催された、位置情報ビジネスセミナー@近畿大学
本セミナーでは、位置情報データを活用したビジネスの可能性について語られました。
各セミナーで語られた内容を数回に分け、ご紹介します。
ロケーションデータは、個人情報である場合も個人情報でない場合(個人関連情報)も、いずれにしても機密性の高いデータであり、プライバシー保護の考慮が不可欠です。そのデータを事業で取り扱うに際して、AIを活用することで、その事業の「リスクと対策」を説明することができるようになります。今回の登壇では、そんなAI活用と事業の展開の壁を超える方策についての提案を頂いています。
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データ活用に必須の「守り」と「攻め」:炎上回避とAI時代の生産性向上
プライバシーテック株式会社の山下大輔氏(LBMA Japan元役員)は、CEATEC 2025での登壇で、位置情報データ活用における最も重要なテーマ、すなわち「リスク管理(守り)」と「AIによる生産性向上(攻め)」について語りました。
位置情報データ活用のリスク:法令遵守だけでは不十分
位置情報データは、その性質上、プライベートの追跡や紐付けといったユーザーの不安を喚起しやすく、非常にリスクが高いデータです。企業が法令やガイドラインを遵守していても、「炎上」事例が後を絶たず、サービス停止や業界全体のイノベーション停滞という悪循環を生んでいます。
山下氏は、炎上リスクが高まる根本的な原因は、従来のリスク評価が「法令(法学)」の遵守に偏り、「ユーザーの心情」への配慮が不足していることにあると指摘します。
法令をクリアすることは最低条件であり、個人情報やプライバシーテックといった観点に加え、データ活用が人々にどう受け止められるかという倫理的な視点の組み込みが不可欠です。
案件推進の壁:社内「説明の壁」を乗り越える方法
データ活用プロジェクトが社内で承認を得る過程で、現場と法務・経営層との間に「説明の壁」が生じがちです。特に「炎上リスクは本当になのか?」という問いに対し、明確に答えられず案件が頓挫するケースが多く見られます。
この壁を乗り越え、データ活用を円滑に推進するためには、以下の要素を網羅した多角的な説明責任が求められます。
・データフローの可視化: データの流れを明確に示す。
・法令遵守の確認: 法的リスクがないことを示す。
・ユーザー心情の考慮: 人々の気持ちに寄り添った設計であることを説明する。
・リスクとリターンのバランス: 事業効果と潜在リスクを明確に天秤にかける。
これにより、法務・経営層に対してリスクを管理下に置いた上での事業推進であることを示し、全社的な賛同を得ることが可能となります。
AI時代における日本の成長戦略と「仕組み作り」
山下氏は、生成AI(GPT)を、電気や自動車の登場に匹敵する「汎用技術(General Purpose Technology)」と位置づけました。AIは、特定の産業だけでなく、すべての産業構造を根底から変革し、日本の低迷する労働生産性を劇的に向上させる機会を提供します。
ただし、単にAIを導入するだけでは生産性は上がりません。AIによって創出された労働時間を、生産性の高い、新たな価値創造へと変換する「仕組み」を築くことが、国際的な競争力を取り戻す鍵となります。
LBMA Japanは、まさにこの「仕組み作り」を担い、規制を待つのではなく、業界自らガイドラインを策定し、順守する仕組みを構築してきました。山下氏の会社では、このノウハウを応用し、データ活用・AI導入のリスクを評価・監査する「AIエージェント」を開発し、煩雑な業務プロセスを効率化することで、日本企業の社会実装を強力に後押ししています。
まとめ
データ活用が不可避な現代において、成功の鍵は、法令遵守に加えて「ユーザーの心情」を考慮した徹底的なリスクマネジメントにあります。LBMA Japanが推進してきたような自律的な業界ルールの策定や、AIを活用したガバナンスの効率化こそが、企業が炎上リスクを回避し、AI時代の生産性向上とイノベーションを両立させるための不可欠な戦略となります。
今後の企業は、既存の枠組みに囚われず、自ら「仕組みを作る」視点を持つことが求められます。
