2025年7月7日配信
人流データを活用した地域経済活性化への挑戦 byデジタルマネージ・ウィズエー(株)
代表取締役 横田孝宜
(所属や役職は配信当時の情報となります)
2024年6月26日に開催された、LBMA Japan主催、「データがつなぐ地域の未来」をテーマに掲げた「上越アニバーサリーイヤー・位置情報利活用セミナー@上越妙高」。本セミナーでは、位置情報データを活用した地域活性化の可能性について深く掘り下げられました。
各セミナーで語られた内容をご紹介します。
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上越妙高駅の誕生と地域経済の課題
2015年3月の北陸新幹線延伸により、それまで1日140人程度のローカル駅だった上越妙高駅は、特急接続駅となり、新たな人の流れが生まれました。しかし、横田氏は、人の流れの増加が必ずしも経済効果に直結しているわけではないという現状認識を共有しました。この課題意識が、同社の人流データ活用事業の出発点となっています。
横田氏は、上越妙高駅の発展と今後10年を見据え、民間主導で地域を盛り上げるために設立された「上越妙高駅エクステンションコンソーシアム」の賛同メンバーの一人として活動しており、今回のイベント開催もその一環であることを紹介しました。
デジタルマネージの取り組みと強み
デジタルマネージは、2017年から商業施設の人の数をWi-Fiコントローラーのログデータでカウントするビジネスに着手。2021年に新潟県の企業支援を受けて事業化し、2023年からは上越妙高駅をはじめ、高田本町商店街、妙高高原、糸魚川市妙高高原駅前、道の駅「うみてらす名立」など、新潟県内の様々な場所にWi-Fiセンサーを設置し、24時間365日人流データを取得しています。
同社の強みは、Wi-Fiを活用することで、どんなキャリアのスマホからでもシンプルなデータを継続的に取得できる点にあります。これは、高価なシステムを導入せずとも、手軽に人流データを活用したいというニーズに応えるものです。
現在、同社は埼玉県の大規模なまちづくり計画の実証事業へのセンサー導入が決定するなど、県外での実績も広げています。横田氏は、単にデータを取得・表示するだけでなく、そのデータを5年後、10年後のまちづくりの参考にできるよう、コンテンツを含めたトータルな提案を重視していると述べました。
人流データ活用の事例と次へのアクション
横田氏は、データを「取得するだけ」「可視化するだけ」ではなく、「次のアクションに繋がる利活用」が重要であると強調し、以下の3つの事例を紹介しました。
・上越妙高駅周辺の分析: 東口と西口、新幹線改札と在来線改札前のセンサーデータを比較したところ、西口の夕方以降の利用者が著しく増加していることが判明しました。一方で、駅周辺の居酒屋や飲食店が3~4軒しかない現状に対し、500室以上のホテルがあることを指摘。このデータから、「飲食店舗の誘致」が喫緊の課題であると提言し、行政に対し商業施設の誘致支援を改めて呼びかけました。
・越後湯沢駅の分析: 2023年2月から2024年4月までの1年1ヶ月間の人流データを分析した結果、温泉街に近い西口よりも、スキーバス停留所がある東口と改札の同期が高いことが分かりました。これは、スキー利用者が駅の東口を利用する傾向が強いことを示しており、今後、妙高高原の開発が進みインバウンドが増加する中で、上越妙高駅周辺の観光施策を考える上での参考になると示唆しました。
・越後謙信SAKEまつりの分析: 本町通りに設置したセンサーデータと、公式発表の来場者数を比較しました。センサーデータからは、来場者の平均滞在時間が2時間以上と長く、これは他のイベントと比較しても非常に長いことが判明。
横田氏は、これほど多くの人が長時間滞在するイベントでありながら、出店者の売上データが十分に活用されていない現状を「もったいない」と指摘。人流データと売上データをクロス分析することで、より効果的な観光周遊プランの作成や誘致施策の検討が可能になると提案しました。
これらの事例を通じて、横田氏は、人流データから「明らかになった課題」を抽出し、それに対する「次へのアクション」をどう考えるかが重要であると強調しました。
点から面へ:地域全体の連携と今後の展望
横田氏は、特定の「点」の場所(例:道の駅や上越妙高駅)だけでなく、地域全体を「面」として捉え、データ連携の基盤を構築することの重要性を訴えました。北陸新幹線延伸によって、上越妙高駅周辺は北信越エリアの拠点となり、広域的な波及効果のポテンシャルを秘めていると考えています。
今後は、観光庁が提唱する「点ではなく面で見る」という視点を踏まえ、デジタルマネージがデータ提供や分析を行うだけでなく、地域の課題解決を支援する「伴走支援者」としての役割を強化していく方針です。大手のデータインフラや調査方法を地域に「翻訳」し、共に課題解決に取り組むコンサルティングサービスの提供も視野に入れています。
横田氏は、今回のイベントが、地域の関係者やLBMA加盟企業との「つながり」と「共創」のスタートとなることを強く願い、交流会でのさらなる対話を呼びかけました。