2025年11月10日配信
「ゼンリンが変える!地理空間情報で実現するDigital Twin」 byゼンリン
登壇者:重谷 理沙
(株)ゼンリン プロダクトソリューション事業本部
(所属や役職は配信当時の情報となります)
戦後まもなく創業されたゼンリン。建物1軒1軒を調べつくして、地理空間情報を提供するその基本事業を軸に、住宅地図から始まりカーナビ、GIS、自動運転・ドローン向け高精度地図まで発展しています。2024年に17年ぶりの社長交代を行い、「地図素材提供会社から地理空間情報サービス会社へ」の変革を推進し、地図を構成する数千の要素(地物)を活用したデジタルツインの基盤構築を目指します。Z軸を含む3D情報の精度強化、変化検知によるリアルタイム更新、AIやドローンとの連携などを進め、社会実装型の地理空間情報基盤を構築中。そんなゼンリンの展望を語って頂きました。
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創業77年の老舗が挑む革新:ゼンリンの「今」
「ロケーションウィークリージャパン」に、株式会社ゼンリン プロダクトソリューション事業本部より谷氏がゲストとして登壇。ゼンリンが単なる「住宅地図とナビの会社」ではない、新たな地理空間情報サービス会社へと変貌を遂げている現状が語られました。
創業は戦後すぐの77年前。元々は観光雑誌の付録として人気を博した一軒一軒の建物名が載った住宅地図が事業の原点です。その後、1980年代には地図のデジタル化、1990年代にはカーナビ用地図データの整備へと進化を遂げてきました。
現在、同社は「人が見る地図」から「機械が読む地図」へとパラダイムシフトを推進。自動運転やドローンなどに使用される高精度地図を開発し、さらに「高度地理空間情報」として進化させています。今年の4月には17年ぶりに経営トップが交代し、新体制のもとで「共に作る(共創)」をテーマに、さらなる変革を推し進めています。
「地図の素材屋」から「地理空間情報サービス会社」へ
ゼンリンが目指すのは、「地図の素材の会社」から「地理空間情報サービス会社」への転換です。
従来の地図情報に加え、地図を構成する数千にも及ぶ「地物(ちぶつ)」という構成要素の情報を活用し、「デジタルツイン(仮想空間に現実世界を再現する技術)」の構築を基盤から支えようとしています。
この進化は、特に機械(AI)が情報を読み解く時代において重要です。人が視覚的に把握しにくい膨大な詳細データも、機械は正確に処理し、より多くの方々にスマートに活用される世界の実現を目指しています。
デジタルツインと「Z軸」の可能性
今後の地図進化の方向性として、谷氏はデジタルツインの基盤作りを強調しました。
例えばドローンの運行においては、X(経度)、Y(緯度)だけでなく、Z(高さ)の正確な情報が不可欠です。ゼンリンはこれまでも建物の階数情報などから高さ情報を有していましたが、今後はさらにZ方向の精度を高める整備に取り組み、ドローンの安全な飛行ルート(クール)設定や、物流の効率的な順路最適化に貢献していきます。
また、空のルール(ドローン運行の法整備)に関しては、国と連携を取りつつ、より便利な社会実現に向けた社会実装への貢献を目指す姿勢を示しました。
自動運転の安全性と「リアルタイム性」の追求
自動運転の実装においては、「地図情報」と「センサー」の組み合わせが現在の主流です。センサーのみでは対応が難しい「霧」や「ゲリラ豪雨」といった日本の複雑な気象条件のもとでも、高精度な地図情報があれば、より安全で効率的なルート選択が可能となります。ゼンリンは、この安全性を支える重要な価値を提供しています。
地図のリアルタイム性(鮮度)を高める取り組みも進んでいます。今後は、定期的な現地調査だけでなく、変化情報をトリガーとして、変わった箇所を集中的に整備する手法へ移行し、情報の鮮度維持を効率化します。さらに、地図という基礎情報に加え、アライアンス先との連携を通じて、活動情報や意味情報といった「今どう使われているのか」という動的な情報もデジタル基盤に組み込み、真のデジタルツイン構築を目指しています。
まとめ:共創社会で実現する次世代地理空間情報
ゼンリンは、創業の精神である「全隣友好」(隣人と仲良く)の通り、「共創(共に作る)」を活動テーマに掲げています。
同社がこれまで培ってきたベーシックな地理空間情報レイヤーを基盤として提供し、そこに他社の持つ状態の情報や知識の情報を連携させることで、真のデジタルツインの構築、ひいては次世代の地理空間情報社会の実現を目指しています。
