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2026年3月9日配信

防災xデータの現在地<創業2年経過のHi-Lights>

 

登壇:山田 梢 株式会社Hi-Lights 代表取締役

(所属や役職は配信当時の情報となります)

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LBMA Japan防災×データをテーマに、山田さんとホストのLBMA Japan、川島がディスカッションを行なっています。「当たり前に助かるを増やす」を掲げ、人流データを活用した避難シミュレーションや避難計画の高度化に取り組む一方、防災市場は参入障壁が高く、特に自治体では平時・切迫時のデータ活用に十分な予算がつきにくい現状を共有します。情報収集や可視化のソリューションは増えている一方、被害予測やシミュレーションはまだ少ない、という課題もあるデータと防災の現状。BCP需要、災害時の経済循環、ボランティア運営の仕組み化など、防災ビジネスの新たな可能性について議論します!

Hi-Lights創業当初のエピソードはこちら:https://youtu.be/zzaO_cH1_Es

 

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右肩上がりの防災市場とデータ活用の現実

防災市場は2027年度には1,533億円規模に達すると予測される成長産業です。

しかし、その内訳を詳細に見ると、人流データなどの高度な情報活用には大きな壁が存在します。

現在、自治体が保有する予算の大部分は、発災後の復旧・復興に対する物理的な支援に充てられており、平時や切迫時(発災から72時間以内)にデータをどう活用するかという領域には、十分な予算が割かれていないのが現状です。自治体担当者からはデータの重要性について理解は得られるものの、マネタイズや具体的なサービス導入に至るまでには、市場がまだ十分に形成されていないという厳しさがあります。

BCP対策を背景とした民間市場の盛り上がり

 

一方で、民間企業(B2B)の領域では変化の兆しが見えています。特に2025年以降、企業の事業継続計画(BCP)に対する予算措置が明確化されており、総務部門や防災専門の部署がデータの利活用に熱心に取り組むケースが増えています。多くの企業が何らかの防災サービスを導入しており、民間主導でのデータ利活用は自治体よりも進んでいる側面があります。

位置情報データに「時間」と「視点」の軸を加える 

内藤氏は、位置情報データの活用において、単なる緯度・経度の数値以上の価値を見出しています。 同じ場所であっても、訪れる人の背景や経験、さらには「時間軸」によって、その場所が持つ役割や意味は全く異なると指摘します。
例えば、ある地点において過去にどのような歴史的出来事があったのか、あるいは現在のその場所が他の誰かにとってどのような意味を持つのかといった情報を付加することで、ユーザーに新しい気づきを与えることができます。 このように、多角的な視野と時間軸を持って位置情報を取り扱うことが、ミックウェアが目指す高度な位置情報サービスのあり方です。

ソリューションマップから見る「予測」領域の空白

 

現在の防災ソリューションを整理すると、情報収集や可視化の分野はすでに多くのサービスが存在する「レッドオーシャン」状態にあります。火災や地震、津波など、あらゆる災害に横断的に対応できるリッチなサービスが揃っています。しかし、被害を事前に予測する「シミュレーション」の領域は、依然としてソリューションが極めて少ない「グレーゾーン」となっています。この背景には、経済合理性の問題があります。民間企業が自社ビルや特定エリアの被害予測を行うために多額の投資をしても、それ自体が直接的な収益やレピュテーションの向上に繋がりにくいという課題があるためです。

テクノロジーとビジネスモデルの融合による突破口

 

この課題を突破する鍵として、AIの活用と「フェーズフリー(有事と平時の切り替え)」なビジネスモデルが挙げられます。これまで膨大な時間とコストを要していた被害シミュレーションは、AI、特に地理空間情報を扱うジオAIの活用によって大幅な短縮が可能になりつつあります。また、平時は通常の物流管理などを行い、有事には即座に復興支援へと切り替えられるような、既存のビジネスに防災機能を組み込んだモデルが注目されています。例えば、ダンプトラックの運行管理システムを平時は業務効率化に使い、災害時には復興支援のトラッキングに活用するといった、経済性と社会性を両立させた仕組みが求められています。

ステークホルダーとの信頼構築とコミュニティの重要性

 

防災という公共性の高い領域では、サービスの内容以上に「誰と作るか」という信頼関係が極めて重要です。国、気象庁、民間大手企業といった主要なプレイヤーとネットワークを築き、現場が真に必要としているニーズを吸い上げながら、共に社会実装を進めていく姿勢が不可欠です。また、ボランティア管理のような、自治体が現場で直面している具体的なペインポイント(紙ベースの管理による煩雑さなど)をシステムで解決することも、経済循環を促す一助となります。

まとめ

 

防災分野におけるデータ利活用は、技術的な進歩以上に、市場の構造的課題や経済合理性の欠如という大きな壁に直面してきました。

しかし、企業のBCP意識の高まりやAIによるコスト削減、そして平時と有事を分けないフェーズフリーな発想の導入により、新たなビジネスモデルが構築されつつあります。

株式会社Hi-Lightsは、人流データを核とした分析スピードの向上と、産官学の連携を通じた信頼性の高いネットワーク構築を推進することで、防災を単なるコストではなく、サステナブルな経済活動の一部へと変革しようとしています。

今後、自治体や民間企業が持つ課題に対して、データの力で具体的な解決策を提案し続けることが、「当たり前に助かる」社会の実現に向けた確かな一歩となるでしょう。

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