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2026年1月26日配信

35年目のテレワーク推進 by日本テレワーク協会 

 

登壇:
中村幸弘 一般社団法人日本テレワーク協会 主席研究員

(所属や役職は配信当時の情報となります)

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1991年に設立された日本テレワーク協会(JTA)は、中小企業での労務管理支援を主要な活動とし、働き方DXの推進活動を行なっています。地方創生プロジェクトについて、JTAが182の自治体と300の企業を含む400の会員企業を通じてマッチング支援を行っており、50代後半の定年退職者が地方でのセカンドキャリアに関心を持つ可能性について今回議論させて頂きました。

テレワークの実装や地域の需要への取り組み、環境関連の活動についてなど、35年目となる協会の挑戦についてお話しいただきました。

 

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日本テレワーク協会の歩みと「働き方DX」の提唱

 

JTAは、1991年に「日本サテライトオフィス協会」として設立された歴史ある団体です。

当時は経済産業省主導のもと、NTTグループや富士ゼロックス、リコーといった事務機メーカーや通信会社が中心となり、新しい産業創出を目指して活動が開始されました。2000年に現在の名称に変更されましたが、その理念は「柔軟な働き方を普及させることで個人に活力を、企業や地域に活性化をもたらし、社会の持続的発展に寄与する」という、現代のパーパス経営にも通じる先見性のあるものです。

現在、JTAが注力しているキーワードが「働き方DX」です。これは単なる在宅勤務の推奨ではなく、ICTを利活用して業務そのものを変革し、新たな付加価値を生み出すことを指します。中村氏によれば、現在のテレワークには「守り」と「攻め」の二つの側面が存在します。
「守りのテレワーク」とは、労務管理や就業規則の整備といった、適切なリモートワーク環境を維持するための土台作りを指し、特にガイドライン整備が遅れている中小企業からの相談が増加しています。「攻めのテレワーク」とは、VR(仮想現実)を用いた遠隔業務や遠隔医療など、テクノロジーを活用してビジネスの可能性を広げる領域を指しており、JTA内の研究部会で日々深掘りが行われています。

地方創生に向けた「移動」と「働き方」のシナジー

 

JTAとLBMA Japanには、位置情報や移動データを活用して「地方創生」や「関係人口の拡大」を目指すという強い共通項があります。JTAでは、自治体と民間企業のマッチングを支援する「チャレンジ・つながるニッポン」というプロジェクトを展開しており、約200の自治体と約200~300の民間企業が会員として活動しています。

今後は、単なるマッチングに留まらず、より具体的な「社会実装」への移行が課題とされています。具体的には、二地域居住や関係人口のアプローチを通じて、実際に地方で就労する人々を増やす仕組み作りです。例えば、キャンピングカーをワークスペースとして活用し、数ヶ月間地方を巡りながら働く「モビリティと地方創生の融合」といった実践例も生まれています。
こうした「場所にとらわれない働き方」は、人流データを扱うLBMA Japanの知見と組み合わせることで、より精緻な地域活性化施策へと昇華させることが可能となります。

 

ミドルシニア層のセカンドキャリアと「社外ダブルワーク」

 

日本が直面する労働力不足や高齢化社会において、大企業のミドルシニア層(40代後半から60代)の活躍は重要なテーマです。JTAでは、テレワークを「ミドルシニアのセカンドキャリア支援」の強力なツールとして位置づけています。

その一例が、NTTグループなどで導入されている「社外ダブルワーク制度」です。これは業務時間の一定割合を社外の地方支援プロジェクトなどに充てる制度で、参加者は自身のスキルを活かしてCSV(共通価値の創造)事業に携わることができます。
地域側が求めているのは、高度な専門スキル以上に「その地域を良くしたい」という熱意(マインド)であることも多く、ミドルシニア層がテレワークを通じて地域課題に関わることは、将来的な転職や起業、あるいは「社会貢献型ダブルワーク」という新しいキャリアの選択肢を提供することに繋がります。

テレワークがもたらす社会価値:GXとダイバーシティ

 

JTAが描くテレワークの未来は、働き方の変革だけに留まりません。一つは「脱炭素(GX)」への貢献です。テレワークによる移動の削減は環境負荷の低減に直結するため、環境省での経験を持つ中村氏は、この環境価値の深掘りを重要なミッションとしています。

もう一つは「ダイバーシティ(多様性)」の推進です。女性の活躍推進をはじめ、多様なライフステージにある人々が能力を発揮し続けるためには、柔軟な働き方が不可欠なインフラとなります。
テレワークを単なる手段(ツール)として捉えるのではなく、移動データや人流データを活用するLBMA Japanのような外部団体とも積極的に連携し、社会実装を加速させることで、日本全体の活力を高めていくことが期待されています。

まとめ

 

日本テレワーク協会は、1991年の設立以来培ってきた知見を活かし、現代における「働き方DX」を強力に推進しています。テレワークには、労務管理を徹底する「守り」と、最先端技術でイノベーションを起こす「攻め」の双方が重要であり、これらを両立させることで企業の競争力が強化されます。
また、地方創生の文脈では、自治体と企業を結ぶプラットフォームを通じて、関係人口の創出や二地域居住の社会実装を目指しています。特にミドルシニア層が社外ダブルワーク等を通じて地域に貢献する仕組みは、個人のキャリア形成と地域課題解決を同時に実現するモデルとして注目されます。
今後は、脱炭素(GX)やダイバーシティといった広範な社会課題に対し、テレワークが持つ環境的・社会的価値をデータに基づいて証明していくことが求められます。位置情報データを活用するLBMA Japanとの連携は、こうした「移動の最適化」と「働き方の変革」を融合させ、持続可能な社会を構築するための大きな一歩となるでしょう。

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