2026年6月22日配信
AI時代に「カレンダー」と「イベント」はどう変わるのか?ジョルテ下花氏が語る時間軸ビジネスの未来
下花 剛一 (株)ジョルテ 代表取締役社長
(所属や役職は配信当時の情報となります)
ジョルテの下花氏をゲストに迎え、カレンダーアプリ「ジョルテ」と、イベント情報プラットフォーム「イベンティア」の現在地を伺いました。花火大会や展示会だけでなく、商店街や個人の小さな催しまで、あらゆる“出来事“をデータ化することで、街や日常の見え方はどう変わるのか。さらに、AIによって開発やデジタルビジネスの前提が大きく変わる中、カレンダーを単なる予定管理ではなく、人の行動・健康・体験を支える時間軸の基盤として再定義する構想について語っていただきました。
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カレンダーアプリ「ジョルテ」の歩みとイベント事業への展開
株式会社ジョルテは、世界中で多くのユーザーに利用されているカレンダーアプリ「ジョルテ」を提供する企業です。代表の下花 氏はもともとエンジニアであり、約20年前に独立したのち、日本国内におけるスマートフォンの黎明期に合わせてカレンダーアプリの開発に着手しました。
同社は長年にわたり、個人のスケジュール管理を支えるアプリケーションとして広く親しまれてきましたが、現在はその基盤を活かし、新領域として「イベント情報のプラットフォーム事業」を計画的に推し進めています。これまでのシステム受託中心の体制から脱却し、現在はカレンダー機能とイベント関連ビジネスの二つを中核とした、時間軸ビジネスの新たな展開に向けた構造への転換を遂げています。
直感的なイベント探索を可能にする新サービス「イベンティア」の現在地
同社が現在注力しているのが、直感的にイベントを探すことができるサービス「イベンティア」です。このサービスの最大の特徴は、子会社であるイベントバンク社が長年培ってきた、徹底した「人海戦術」による網羅的かつ高品質なイベントデータの存在にあります。
一般的に、AIを用いた機械的なデータ収集では、ウェブ上にデジタル化されていない地域の情報や小さなイベントまでを拾い上げることは困難です。同社は、地道な確認作業を通じて日本全国の信頼性の高いイベント情報を集約しており、国内における主要なメディアやポータルサイトに対しても、データプロバイダーとして情報を提供する確固たるポジションを築いています。
日常の「小さな出来事」までをデータ化する地域DXの推進
下花氏が目指すのは、花火大会やお祭りのような大規模な催事だけでなく、街のパン屋さんが特定の時間に限定パンを焼き上げるといった、極めて日常的で規模の小さな出来事までをもデータ化する世界です。
地域の商店やアマチュアのイベント主催者の多くは、今なお紙のチラシやポスター、あるいはPDFのスクリーンショットをSNSに投稿するような原始的な告知手段に依存しています。こうした地域の情報をデジタルデータとして構造化し、誰もが簡単にアクセスできるようにすることで、街の活動や移動の動機を「見える化」する、真の地域デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けて、観光業界や自治体、商店街との連携を進めています。
イベントプラットフォームが目指すデータ基盤とAI時代における価値
イベンティアの最終的な目標は、単にユーザーがイベントを検索するためのウェブサイトやアプリといった「入れ物(インターフェース)」にとどまることではなく、強固な「データプラットフォーム」の地位を確立することにあります。
AI技術が急速に進化する現代において、情報を提示するUIそのものの価値は変化していく可能性がありますが、AIが参照するための大元となる正しいデータベースの価値が揺らぐことはありません。ウィキペディアのように、信頼できる情報が常に蓄積される「情報の置き場所」となることで、次世代のテクノロジー環境下においても代替不可能な、イベント情報のマスターとなる仕組みづくりを追求しています。
プラットフォームビジネスの構造と経済的エコシステムの構築
イベント情報そのものが直接的に大きな収益を上げることは容易ではなく、多くのプレイヤーがビジネス化に苦戦してきた領域です。しかし、同社は情報の提供側から過度な費用を徴収するのではなく、プラットフォームの周囲で発生する多様な経済活動との連携に着目しています。
大規模な展示会や地域イベントの周辺では、プロモーション、設営、周辺の飲食店や配送など、膨大な「お金の動き」が発生します。イベント情報の最上流を押さえることで、例えば「パンを買った人に近くのコーヒーショップの情報を提示する」といった、ユーザーの新しい体験に紐づく手数料モデルや、他業種との柔軟なサービス連携を通じた、持続可能な経済エコシステムの構築を想定しています。
デジタルビジネスの前提を変えるAIの進化と開発環境の変革
下花氏は、昨今の生成AIの進化を開発者視点で実体験し、ITおよびデジタル業界全体の構造が数年のうちに激変するという強い危機感と、それ以上の期待感を抱いています。かつては10人のエンジニアが1〜2年を要していたシステム構築が、AIを駆使することで、今や個人の発想力と行動力次第で極めて短期間のうちに高い品質で実現できるようになりました。
この開発環境のフラット化により、意思決定に時間を要する大企業の優位性は失われ、アイデアを即座に形にできるプレイヤーが有利な時代が到来しています。同社はカレンダーという伝統的なツールの枠を超え、人間の「時間軸」に寄り添った新しい価値の創出に向けて、リリースのスピードを極限まで高めています。
まとめ
本ポッドキャストでは、長年カレンダー市場を牽引してきた企業が、AIという巨大な技術の波を捉え、単なる予定管理を超えたカレンダーの再定義とイベントプラットフォームの構築へ挑むダイナミックな姿勢が示されました。テクノロジーがどれほど進化し、デジタル上のサービスが数年単位で入れ替わったとしても、人間がリアルな世界で体験する「イベント(出来事)」や、それに伴う「体験・移動」の価値が消えることはありません。
同社の今後の取り組みへの期待性として、長年のサービス運営で蓄積された「時間軸のデータ」と、地道に構築してきた「地域イベントの網羅的なデータ」を融合させるアプローチは、人々のライフスタイルや健康的な生活習慣をパーソナルに支援する、次世代の行動支援インフラへと進化するポテンシャルを秘めています。AI時代におけるデータの真正性と迅速な社会実装が求められる中、こうしたユニークな挑戦がモデルケースとなり、地理空間やロケーションビジネスに関わる市場全体に新たな刺激を与え、業界全体のボトムアップと活性化に貢献していくことが強く期待されます。
