2026年4月20日配信
鉄道GISから3D大阪駅へ:JR西日本コンサルタンツが描く「鉄道OS」と空間データ基盤の未来
登壇:清水 智弘 ジェイアール西日本コンサルタンツ(株)ITシステムデザイン部
(所属や役職は配信当時の情報となります)
JR西日本コンサルタンツの清水氏を迎え、鉄道インフラを支える独自GISの開発背景と約20年の進化、現場で1万5千人以上が利用するモバイルGISの実践活用を紹介。さらに大阪駅3Dマップを核としたデジタル空間プラットフォームの可能性や、継続的なビジネス創出に向けたアイデアソンの狙い、「鉄道OS」としての基盤と外部連携による共創の展望について議論します。
*一部音声の聞き苦しい部分があります。ごめんなさい。
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ジェイアール西日本コンサルタンツの役割とITシステムデザイン部
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社は、国鉄からJR西日本への民営化に合わせて設立された、JR西日本グループの建設コンサルタント会社です。同社は、鉄道インフラの計画・設計から施工、維持管理に至るまでをトータルで担っており、現実空間におけるインフラ整備を支援しています。
清水氏が所属するITシステムデザイン部は、土木、建築、電気といった多岐にわたる専門系統の設計業務をITの力で横断的に繋ぐ役割を担っています。単なるIT部門にとどまらず、現実のインフラ整備をデジタル技術で効率化・省力化することに加え、デジタル空間上にインフラ環境を構築し、様々な業務を紐付けるプラットフォーム作りを推進しているのが特徴です。
鉄道業務に特化した独自GISの開発と進化
同社の大きな強みの一つが、2007年から約18年にわたり運用を続けている「鉄道GIS」です。当時の汎用的なGISでは、鉄道独特の距離標(キロ程)に基づいた位置管理に対応することが難しかったため、エンジンから独自に開発されました。このシステムは、当初「電子線路平面図システム」として図面管理を目的としてスタートしましたが、その後20年の歳月を経て、構造物の維持管理や防災情報の管理、現場の業務効率化へとその機能を拡大させてきました。
現在では、PC上での高度な利用に加え、現場での利便性を追求したモバイル版GISも展開されています。このモバイル版は「鉄道版地図アプリ」というコンセプトのもと、ライトな操作性を重視して開発されました。具体的には、現場での位置確認や写真撮影によるピン立て登録など、日常的なツールとして活用されています。現在、JR西日本グループ内で約1万6,000人のユーザーが利用しており、社員の2人に1人が活用する極めて浸透度の高いインフラへと成長しています。
データ利活用による組織横断的なリスク管理
GISの普及は、データの利活用という側面でも大きな変化をもたらしました。従来、線路を管理する「保線」、橋梁やトンネルを管理する「土木」、さらには「電気」「建築」といった各系統が個別にリスク情報を管理していました。しかし、誰もが使いやすいモバイルGISの登場により、他部門が登録した現場のリスク情報を容易に参照できるようになりました。これにより、部門を越えた安全情報の共有が実現し、現場作業の安全性向上に寄与しています。
大阪駅3Dマップを活用したデジタルツイン・ビジネスアイデアソン
同社は現在、鉄道の沿線管理だけでなく、駅舎やその周辺の街づくりにおけるデジタル活用にも注力しています。その象徴的な取り組みとして、2026年4月20日に「大阪駅3Dマップを活用したビジネスアイデアを考えよう デジタルツイン・ビジネスアイデアソン」を開催しました。
このイベントでは、従来の2次元的な表現を超えた「3D校内図」をベースに、約20社50名の参加者が新たなビジネスモデルを模索しました。日本屈指の複雑な構造を持つ大阪駅を3D空間として再現したこのプラットフォームを、いかに持続可能なビジネスへと繋げていくかが焦点となっています。清水氏は、設計段階から詳細な情報を持つコンサルタントとしての強みを活かし、変化の激しい駅空間のデータを継続的にメンテナンスできる体制の重要性を強調しています。
未来への展望:鉄道OSとしての競争と共創
今後の展望について清水氏は、自社を「プラットフォーム(基盤)を作る会社」と位置づけ、その役割を「鉄道OS」と表現しました。OSとしての土台を同社が提供し、その上で動くアプリケーションやソリューションを、LBMA Japanの会員企業をはじめとする多様なパートナー企業の知見やスキルと連携させていきたいと考えています。
自社だけでは補いきれないビジネスモデルの構築や社会課題の解決に向け、LBMA Japanのスローガンでもある「共創」を体現していくことが、同社の目指す方向性です。位置情報とデジタルツインを軸にしたこの取り組みは、鉄道インフラの維持管理を高度化させるだけでなく、新たな社会価値を創出する可能性を秘めています。
まとめ
本記事では、清水智弘氏へのインタビューを通じて、JR西日本コンサルタンツが歩んできたデジタル化の軌跡と未来像を紐解きました。2007年から続く独自の鉄道GIS開発は、現場のニーズに即したモバイル展開を経て、今や社員の半数が利用する不可欠なツールとなっています。さらに、大阪駅を舞台としたデジタルツインの試みは、コンサルタントとしてのデータ精度とパートナー企業のアイデアを融合させる、新たなビジネスフェーズへの挑戦と言えます。「鉄道OS」という基盤の上で、多様な企業との共創が進むことにより、位置情報データの活用は単なる効率化を超え、私たちの生活をより豊かにする持続可能なサービスへと進化していくことが期待されます。
