2026年5月18日配信
現実空間をそのまま3D化する - VR・ドローン・インフラ点検の未来、と品川を想う
纐纈 修(株) iishina 代表取締役
(所属や役職は配信当時の情報となります)
株式会社iishinaの纐纈(こうけつ)さんを迎え、VR・3D映像制作・ドローン活用について伺いました。工場やプラントを3D化し、現場に行かずに設備や配管の状態を確認できる仕組みや、展示会を丸ごと撮影してバーチャル会場としてアーカイブする取り組みを紹介。さらに、ECやAIとの連携、下水道など老朽インフラの保守点検への応用まで、現実空間をデジタル化する可能性を掘り下げます。
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株式会社iishinaの設立背景と社名に込められた地域貢献への想い
株式会社iishinaの代表取締役を務める纐纈修氏は、東京の品川出身であり、地元への貢献を第一に考えて会社を立ち上げました。社名の「iishina」は、出身地である「品川」の「品」と、価値のある「いい品」を世界に届けるという二つの意味を掛け合わせて名付けられました。ロゴマークにも品川の「品」をモチーフにしたアイコンが採用されており、地域に根ざした企業姿勢が象徴されています。
同社の事業内容は、Webの企画開発からVR制作、そしてドローンを活用した3D計測まで多岐にわたります。纐纈氏は、自身が実現したいアイデアを一つずつプロダクト化し、社会貢献に繋げていくことを目指しています。単なる通販サイトのような名称でありながら、その実態は最先端の空間撮影技術を駆使したITソリューション企業であり、現実空間をデジタルデータとして価値化することに注力しています。
3D空間撮影サービスが解決する「図面と現場」のギャップ
iishinaが提供するメインプロダクトの一つが、特殊な3Dスキャナーやドローンを使用して現実空間を撮影し、それをブラウザ上で閲覧可能な3Dモデルへと変換する「空間撮影サービス」です。このサービスは、地上からの撮影だけでなく、広大な敷地を持つ施設ではドローンを用いて数万平米もの空間を丸ごとデジタル化することが可能です。
特に製造業やプラント工場において、この技術は大きな威力を発揮しています。工場内には複雑な配管やバルブ、フランジ(継手)が張り巡らされており、従来の2次元図面だけでは現場の正確な形状を把握することが困難でした。図面上では直線に見えても、実際には障害物を避けるために曲がっていたり、高さが異なっていたりすることが多々あります。3D空間化することで、事務所にいながらブラウザ一つで現場のリアルな形状を確認でき、いつメンテナンスを行ったか、特定の部品がどこにあるかといった情報を紐づけて管理できるようになります。これにより、現場に足を運ぶ回数を劇的に減らし、保守・保全の効率化を実現しています。
コロナ禍を契機とした3D事業の拡大とバーチャル展示会の可能性
纐纈氏が3D空間やVRの事業に本格的に乗り出したきっかけは、コロナ禍にありました。外出が制限される中で、室内からでも現場を体感できる仕組みへの需要が高まると直感したためです。その中で、実空間をデジタル化するメリットが最も大きい業種として工場やイベント業界に注目しました。
従来のバーチャル会場制作は、ゼロからCGを構築するため多額のコストと時間がかかる点が課題でした。そこでiishinaは、米国製の最新スキャン機材などを導入することで、撮影とレンダリングの工程を大幅に効率化しました。例えば、2,000平米程度の空間であれば約2時間で撮影が完了し、最短1日で公開可能な状態まで仕上げることができます。コスト面でも、1日撮影で15万円程度からという安価でライトな枠組みを構築しました。
このスピード感とコストパフォーマンスにより、展示会業界での活用が進んでいます。会期が数日と短い展示会において、設営完了後の夜間に撮影を行い、翌日からアーカイブとして公開することで、会場に来られない顧客へのアプローチが可能になります。また、この3D空間は次回の出展勧誘のための営業資料としても活用されており、一時的なイベントを継続的な資産へと変える役割を果たしています。
ECサイトへの応用と没入感を生かしたマーケティング戦略
3D空間の活用は、マーケティングやEC(電子商取引)の分野にも広がっています。従来のバーチャルショップでは、商品をクリックすると静的な商品ページに遷移してしまい、ユーザーの没入感が削がれる「離脱」が課題となっていました。
iishinaでは、3D空間内にカート機能や決済機能を直接組み込む開発を行っています。これにより、ユーザーはバーチャルな棚から商品を選び、その世界観を維持したまま購入を完結させることができます。纐纈氏は、バーチャル空間自体のPV数やクリック数を向上させることがSEOの観点からも重要であると説いています。単に「3Dで作って終わり」にするのではなく、中に情報を付加し続け、繰り返し訪れる価値のあるコンテンツを更新し続けることが、ビジネスとしてのマネタイズに直結すると考えています。
社会インフラを守る「インフラ事業」への展望とAIの活用
今後の展望として、纐纈氏は「インフラ事業」への注力を掲げています。特に老朽化が深刻な社会問題となっている下水道の保守点検において、3D技術を活用した新しい仕組みを構築しています。360度カメラを下水道内に流し込み、その動画データから3Dモデルを生成することで、点検の精度を向上させる取り組みです。
全国で相次ぐ道路の陥没や配管の破裂といった事故を防ぐため、目視では困難な箇所の劣化状況を3Dで可視化し、日本のインフラを救いたいという強い想いがあります。この分野ではAIとの連携も進めており、3Dモデルの生成過程の自動化や、空間内に配置するシミュレーション用データの作成にAIを活用することで、さらなる効率化を目指しています。AIを単なるチャットツールとしてではなく、3D空間という具体的な枠組みと組み合わせることで、実社会の課題解決に役立てる姿勢を鮮明にしています。
まとめ
株式会社iishinaの取り組みは、現実空間をデジタル化することで、物理的な距離や時間の制約を超えた価値を提供しています。工場の保守保全における効率化、展示会のアーカイブ化による営業支援、そしてECにおけるユーザー体験の向上など、3Dスキャン技術の用途は多岐にわたります。代表の纐纈修氏は、最新技術を駆使しながらも、その根底には「品川から社会を良くする」という地域貢献の精神と、日本の老朽化したインフラを守るという強い社会的責任感を持っています。今後、AIとの融合がさらに進むことで、デジタルツインは単なる視覚的なツールから、私たちの安全な暮らしを支える不可欠な社会基盤へと進化していくことが期待されます。
