2026年6月29日配信
マップルが描く観光DX――紙とデジタルで地域の魅力を可視化する
信田 宏之(株)マップル 取締役 地域共創本部長
(所属や役職は配信当時の情報となります)
今回は、株式会社マップルの信田さんをゲストに迎え、同社が新たに立ち上げた地域共創本部の取り組みについて伺いました。マップルマガジンやことりっぷなど、長年培ってきた出版・編集ノウハウを活かし、自治体やDMOに向けて観光DX、デジタル観光パスポート、地域プロモーションを展開。紙媒体とデジタルを組み合わせた情報発信、LINEを活用した継続的なファンづくり、江東区での事例、旅行代理店やインフルエンサー企業との連携など、地域の魅力を可視化し、交流人口・関係人口の創出につなげるマップルの挑戦を紹介します。
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マップルが推進する地域共創事業の全容
株式会社マップルは、長年培ってきた地図制作や出版・編集のノウハウを基盤に、自治体やDMO(観光地域づくり法人)を支援する「地域共創本部」を新たに立ち上げました。この取り組みは、単なる情報発信にとどまらず、地域の課題を深く理解し、解決へと導くためのパートナーシップを構築することを目的としています。
昭文社グループが誇る「まっぷるマガジン」や「ことりっぷ」などの有力ブランドで培った、観光客目線の編集力が最大の強みです。 全国各地の観光情報を網羅した膨大なデータベース(MAPPLEガイドデータ)を活用し、地域の魅力を整理・可視化します。 従来の出版事業で培った信頼性を活かし、自治体の政策意図を汲み取った戦略的な観光プロモーションを展開します。 観光客の「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」という一連の行動サイクル(カスタマージャーニー)に基づき、各フェーズで最適なソリューションを提供します。
出版ノウハウとデジタルが融合する観光DXの強み
マップルが描く観光DXの核心は、紙媒体の情緒的価値とデジタルの機能的利便性を組み合わせた「ハイブリッド型」の情報発信にあります。紙のパンフレットや地図が持つ「一覧性」や「手触り感」を活かしつつ、デジタルで最新情報の提供や行動ログの取得を行うことで、観光体験をより豊かなものにします。
紙のガイドブックや観光マップを入り口として、QRコードやAR(拡張現実)を通じてデジタルコンテンツへシームレスに誘導します。 デジタル観光マップでは、スマホでの操作性に優れたUI(ユーザーインターフェース)を採用し、GPSによる現在地周辺検索やルート案内を可能にします。 3D地図やベクターマップを活用することで、地域の地形や地勢をリアルに表現し、旅行者のワクワク感を醸成します。 日本語だけでなく、インバウンド(訪日外国人)ニーズに対応した多言語展開も標準的にサポートしています。
LINEを活用した「デジタル観光パスポート」の革新性
観光DXの具体的なツールとして注目されているのが「デジタル観光パスポート」です。これは、専用アプリのインストールを必要とせず、利用者が日常的に使用しているLINEを活用する点が最大の特徴です。
LINEの友だち登録だけで利用を開始できるため、利用ハードルが極めて低く、多くのユーザーにリーチ可能です。 メッセージ配信機能を通じて、観光地を訪れた後も継続的な接点を持ち続けることができ、再訪を促す「旅アト」の施策として機能します。 地域のデジタルスタンプラリーやクーポン配信、施設予約、ECサイトへの誘導など、多様な機能を一つのプラットフォームに集約できます。 自治体側は「パスナビ」と呼ばれる管理画面を通じて、リアルタイムでコンテンツを更新したり、利用者の属性や行動傾向を確認したりすることが可能です。
可視化による関係人口の創出と持続可能な観光施策
多くの自治体が直面する「施策が一過性で終わる」という課題に対し、マップルはデータの可視化を通じた「関係人口」の創出を提言しています。誰がどこを訪れたのかというデータを蓄積することで、客観的なエビデンスに基づいた観光戦略の策定が可能になります。
交流人口(一度きりの観光客)からリピーター、そして地域に愛着を持つ「関係人口(ファン)」へと引き上げるステップを重視します。 デジタルツールの導入により、これまで把握が難しかった観光客の動線や属性情報を可視化し、次のプロモーションの精度を高めます。取得したデータを分析し、地域の特産品販売(EC)やふるさと納税、移住・定住支援サイトへの誘導など、地域経済への直接的な貢献につなげます。データを根拠とした施策の評価・改善のサイクル(PDCA)を回すことで、予算の最適化と事業の継続性を確保します。
江東区の事例に見る「メタ観光」の新たな価値創出
東京都江東区では、既存の観光スポットだけではない地域の多層的な魅力を発掘する「メタ観光」の取り組みが展開されています。マップルはこの「メタ観光」の概念を観光DXに取り入れ、新たな観光資源の可視化を支援しています。
メタ観光とは、歴史や文化、アニメ聖地、写真映え、さらには「暗渠」や「地勢」といった多様な価値(レイヤー)を地図上に可視化する考え方です。専門家や地域住民とのワークショップを通じて、従来の観光ガイドには載っていない「隠れた名所」や「独自の視点」による観光資源を抽出します。江東区の事例では、渋沢栄一ゆかりの地整備事業やまち歩きMAPの制作など、地域固有の歴史資源とデジタルを連携させています。可視化された多層的な情報は「メタ観光マップ」として提供され、観光客にこれまでにない深掘りした周遊体験を提供します。
外部連携と多様なプロモーションが加速させる地域活性
マップルの強みは自社ソリューションにとどまらず、旅行代理店やインフルエンサーマーケティング、AR技術を持つパートナー企業などとの広範なネットワークにあります。これにより、地域が抱える多様な課題に対して最適な布陣で臨むことが可能です。
観光に特化したインフルエンサーを活用し、特定のコミュニティに対して信頼性の高いメッセージを発信することで、認知拡大と送客を強化します。 各国の文化や言語に精通したインフルエンサーを招聘し、インバウンド層に響くクリエイティブなコンテンツを制作します。 地域の特性に合わせて、紙のパンフレット制作からWEB広告、SNS運用、イベント開催まで、手法を問わないワンストップの支援を行います。 観光庁が推進する観光DXの指針に基づき、地域のDMOや事業者が自立してデジタルを活用できるような研修や技術支援も提供しています。
まとめ
株式会社マップルが描く観光DXの未来像は、単なる「デジタルの導入」ではなく、紙とデジタルの融合によって地域の魅力を多角的に可視化し、一過性の集客を継続的な「関係」へと深化させることにあります。特に、LINEを活用した「デジタル観光パスポート」は、ユーザーの利便性を損なうことなく地域の顧客基盤を構築する強力な手段となります。
また、江東区の事例に代表される「メタ観光」の推進は、価値観が多様化する現代の旅行者に対し、地域が持つ潜在的な資産を新しい切り口で提案するものです。これらの取り組みを通じて、マップルはデータに基づいた持続可能な地域創生を実現し、日本全国の観光活性化を牽引しようとしています。自治体やDMOにとって、伝統的な編集力と最新のデジタル技術を併せ持つマップルは、観光DXのパートナーとして極めて重要な役割を担っていると言えるでしょう。
