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2025年5月26日配信

EnerCera - センシングデバイスの可能性を広げる超薄型安全電池 by日本ガイシ(株)

龍野雅美 (NV推進本部 DS事業開発 バッテリーアプリケーション 部長)
鈴木千織 (同 マネージャー)

(所属や役職は配信当時の情報となります)

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未来のデバイスはここまで薄くなる!日本ガイシが開発した超薄型電池「エナセラ」は、わずか0.45mm。
クレジットカード搭載を目指して生まれたこの革新的バッテリーが、想像を超える応用事例を生み出しています。
動画では、驚異の薄さ・軽さ・柔軟性が拓く可能性、太陽光やWPT(無線電力伝送)との連携で実現する「常時充電」の未来、そして私たちの生活を劇的に変えるかもしれない次世代IoTデバイスの進化について、お話いただきました。

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0.45mmの革新!日本ガイシの超薄型電池「エナセラ」が切り拓く位置情報とIoTの未来

 

近年、あらゆるモノがインターネットに繋がるIoT(Internet of Things)化が進み、それに伴い位置情報データの活用ニーズも急速に高まっています。しかし、IoTデバイスの小型化や長時間駆動を実現する上で、バッテリーの課題は常に付きまといます。

そんな中、日本ガイシ株式会社(以下、日本ガイシ)が開発した超薄型リチウムイオン二次電池「エナセラ(EnerCera)」が、位置情報ビジネスやIoTデバイス開発に新たな可能性をもたらすと注目されています。先日配信されたポッドキャスト「ロケーションウィークリージャパン」では、同社の達野氏と鈴木氏が登壇し、エナセラの魅力と未来について語りました。
本記事では、その内容を基に、エナセラが持つポテンシャルをご紹介します。

驚異の薄さ0.45mm!「エナセラ」誕生の背景

 

「エナセラ」の最大の特徴は、何と言ってもその驚異的な薄さです。最も薄いタイプではわずか0.45mmしかなく、小型・軽量化が求められるデバイスへの搭載に適しています。

開発のきっかけは、クレジットカードへの電池搭載でした。この目標を達成するために、電池内部の電極に至るまで徹底的に薄くし、それを精密に製造する技術を確立。ラボでの基礎研究から実際のライン立ち上げまで、約3年以上の歳月をかけて製品化に至ったと言います。

 

「エナセラ」の3大特長:薄さ・安全性・充電性能
エナセラが注目される理由は、単に薄いだけではありません。

①圧倒的な薄さと柔軟性: 0.45mmという薄さに加え、軽量で曲げることも可能です。これにより、従来の電池では考えられなかった形状のデバイスや、装着感が重視されるウェアラブル機器への応用が期待できます。


②燃えない安心感: リチウムイオン電池でありながら、釘を刺したり、強く折り曲げたりしても発火しないという高い安全性を誇ります。これは、主要な構成部材にセラミックスを使用しているためで、身に着けるデバイスや安全性が特に求められる用途において大きなメリットとなります。
常時充電に対応: エナセラは、太陽電池やWPT(Wireless Power Transfer:無線電力伝送)といったエネルギーハーベスティング技術との相性が抜群です。常に充電しながら使用しても電池が劣化しにくいため、メンテナンスフリーで長期間安定した稼働が求められるIoTセンサーなどに最適です。


③広がる活用シーン:医療から物流、ウェアラブルまで
既にエナセラは、様々な分野でその特性を活かした活用が始まっています。

-医療・ヘルスケア: 体に装着する小型の治療器やヘルスケアセンサー。
物流・トラッキング: 太陽光パネルと組み合わせたフォークリフトの位置トラッカー。市場でのフォークリフトの動線を把握する実証実験も行われています。
-品質管理: 高級ワインの輸送時にボトルに取り付け、温度や湿度を記録するタグ。品質が維持されていることの証明に繋がります。
-ウェアラブルデバイス: 薄さ、軽さ、安全性、そして曲げられる特性から、スマートウォッチや活動量計だけでなく、より生活に密着した形でのウェアラブルデバイスへの採用が進んでいます。

 


位置情報ビジネスの課題を解決!ビーコンの電池問題にも光

 

位置情報ソリューションで広く活用されるビーコンですが、その普及における大きな課題の一つが「電池」でした。発信頻度によっては数ヶ月から1年程度で電池が切れてしまい、交換の手間やコストが導入の障壁となるケースも少なくありませんでした。

エナセラは、この課題に対する有力な解決策となり得ます。太陽光や室内光、さらにはWPTと組み合わせることで、常に充電しながらビーコンを発信し続けるシステムを構築できます。これにより、電池交換の手間を大幅に削減し、より広範囲かつ長期間にわたる安定した位置情報サービスの提供が可能になります。

WPTで真価を発揮!「エナセラ」が描くIoTの未来図

 

日本ガイシの達野氏は、将来的にWPT技術が普及すれば、エナセラのような小型・薄型電池の価値がさらに高まると語ります。Wi-Fiのように空間に電力が供給される環境が実現すれば、デバイス自体に大きなバッテリー容量を持たせる必要がなくなり、エナセラのような電池で常にログを取り続けたり、センシングを行ったりすることが可能になります。

これにより、これまで電池搭載が難しかった様々なモノがIoTデバイスとなり、私たちの身の回りのあらゆるものがネットワークに繋がる未来が現実味を帯びてきます。例えば、衣服のタグのような形でエナセラを組み込み、着用者の状態をセンシングしたり、何らかの機能を持たせたりすることも考えられます。

さらに、エンターテイメント分野でもエナセラを搭載したアイテムの開発が進んでおり、2025年の夏頃には世の中に出回る可能性があるとのこと。これにより、エナセラの認知度が一層高まることが期待されます。

 

位置情報業界へ:日本ガイシからのメッセージ


最後に、日本ガイシのお二人は、位置情報関連の技術を持つ企業に対し、「エナセラの薄さや特性を活かし、自社の技術と組み合わせることで、これまでにない新しいデバイスやソリューションを生み出してほしい。ぜひ一緒にイマジネーションを膨らませ、開発に取り組みたい」と熱いメッセージを送りました。

 

 

◾️まとめ
日本ガイシの超薄型電池「エナセラ」は、その驚異的な薄さ、高い安全性、そして優れた充電特性により、位置情報ビジネスやIoTデバイス開発に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。特に、ビーコンの電池問題解決や、WPTとの連携によるメンテナンスフリーなシステムの実現は、多くの企業にとって魅力的な選択肢となるでしょう。

今後、エナセラがどのような新しい価値を創造していくのか、その動向から目が離せません。

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