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2026年8月10日配信

商用車18万台の走行データが変える物流・道路・災害対応

田中 準二 矢崎エナジーシステム(株)計装システム事業部、計装システム企画統括部、モノ・コトサービス企画部 マーケティングチーム リーダー

(所属や役職は配信当時の情報となります)

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矢崎エナジーシステムの田中氏を迎え、デジタルタコグラフから取得される商用車プローブデータの可能性を伺っています。速度・位置・距離に加え、ブレーキ、ウインカー、加速度などを取得し、約18万台規模へ拡大する走行データ。道路改善や交通量調査、災害時の通行実態分析、物流現場の荷待ちや休憩場所不足、車両部品の開発・交換予測など、多様な活用事例を紹介します。さらに、通信頻度を10分から5分へ短縮した新型車載機、タクシーデータによる観光動線分析、車両属性情報の拡充など、今後の展望についてもお話しいただきました。

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矢崎エナジーシステムの組織統合とモビリティ事業の進化

矢崎グループは、2026年6月にモビリティ関連の事業本部を矢崎エナジーシステム株式会社へ統合しました。これまで分散していた経営資源を集約することで、経営の効率化と事業の加速を図るのが狙いです。

新たに発足した「計装システム事業部」は、国内トップシェアを誇るタクシーメーターや、商用車の運行管理に不可欠なタコグラフの開発・販売を担っています。同社が提供する「商用車プローブデータ」は、通信型デジタルタコグラフ(デジタコ)を通じて収集される膨大な走行データであり、現代のモビリティ社会を支える貴重な資産となっています。以前の運行記録は円形の紙(チャート紙)に記録されていましたが、現在はデジタル化・通信化が進み、速度・時間・距離という法定三要素に加え、詳細な車両挙動の取得が可能になりました。法令によって商用車には運行記録の搭載が義務付けられており、万が一の事故の際には証拠として、また行政監査の資料としても活用される極めて信頼性の高いデータです。

18万台規模の商用車ビッグデータが持つ圧倒的な詳細情報

矢崎エナジーシステムが扱うデータは、その規模と詳細さにおいて他の追随を許さないレベルに達しています。

現在運用されている約16万台強のデータに加え、2024年秋に導入される新型車載機のデータを統合することで、母数は一気に18万台規模へと拡大します。取得される情報は多岐にわたり、GPSによる位置、高度、方位、速度はもちろん、エンジン回転数や加速度、さらにはジャイロセンサーを用いた角速度まで含まれます。ドライブレコーダー機能を持つ最新機では、画像を解析した結果をデータとして取得することも可能であり、車両の「今」を精密に可視化します。この圧倒的なデータ量は、日本の物流を支える商用車の動線を網羅的に把握することを可能にし、多方面での活用が期待されています。

 

道路インフラ改善と災害時における通行実績の可視化

商用車プローブデータは、公共インフラの最適化や災害対応といった、社会の安全性向上に大きく寄与しています。

道路改善の分野では、事故防止策を講じた前後の挙動をデータで比較分析することで、交差点や危険箇所の改善効果を客観的に評価することが可能です。交通量調査においては、特に大型車両の通行実績を高い精度で把握できるため、優先順位に基づいた効率的な道路整備計画の策定を支援します。災害時の活用において、商用車は「物を届ける」という使命から、一般車両が走行を控える大雨や大雪の中でも運行を続けることが多く、そのデータは極めて貴重な通行実績となります。実際に道路が通行可能かどうかをリアルタイムに近い形で判断できるため、災害時の救済ルート策定や物資輸送の意思決定に活用されています。

 

物流2024年問題への対策と現場のボトルネック解消

物流業界の大きな課題である「2024年問題」や、物流効率化の推進に対しても、データに基づいたアプローチが成果を上げています。

荷主拠点での「荷待ち時間」について、いつ、どこで、どれほどの停滞が発生しているかを正確に把握し、バース予約システムの導入などの改善策へ繋げています。高速道路のサービスエリアやパーキングエリアにおける大型車の駐車枠不足に対しても、満車になる時間帯や場所を特定し、休憩場所不足の解消に向けたエビデンスを提供しています。データから導き出された休息の実態に基づき、時差出勤による物流の平準化や、運行ルートの最適化を検討する事業者が増えています。これにより、ドライバーの労働環境改善と、物流コストの削減という二律背反する課題の同時解決を目指しています。

 

部品メーカーの製品開発とメンテナンスの効率化

商用車データは、完成車メーカーだけでなく、車両を構成する各部品メーカーにとっても新たな価値をもたらしています。

トラックやバスの部品メーカーは、自社製品が実際の現場でどのように使用され、摩耗しているかの詳細な「フィールドデータ」をこれまで持っていませんでした。矢崎のデータを活用することで、ブレーキやウインカーの使用頻度、かかっている負荷などを詳細に把握し、製品の耐久性向上や設計の最適化に役立てています。走行データから摩耗状況を推測することで、最適なタイミングでの部品交換を提案できるようになり、車両の故障によるダウンタイムの削減に大きく貢献しています。これは、運送事業者にとっても計画的なメンテナンスによるコスト抑制と安全性の担保に繋がる、Win-Winのソリューションとなっています。

 

通信頻度の向上とタクシーデータによる観光動線分析

ハードウェアの進化はデータのリアルタイム性を高め、タクシーデータの活用という新しい市場も創出しています。

新型の車載機では、これまで10分間隔だった通信頻度を5分へと短縮し、より詳細な「今どこにいるか」の情報を取得できるようになりました。この5分間隔のデータにより、到着予定時刻の精度が大幅に向上し、物流現場における緻密な工程管理が可能になります。タクシー分野では、LTE通信に対応した新型メーターの導入により、乗降場所や走行ルートの分析が容易になっています。駅からの二次交通としてのタクシー動線を分析することで、観光客がどのようなルートで移動しているかを可視化し、自治体や商業施設の観光戦略に反映させています。

 

まとめ

矢崎エナジーシステムが提供する商用車プローブデータは、18万台という圧倒的な規模と精度を背景に、日本の社会インフラを支える重要な基盤へと進化しています。道路の安全性向上や災害対応、物流2024年問題の解決、さらには部品メーカーの技術革新まで、その活用範囲はもはや単なる運行管理の枠を大きく超えています。

今後は、走行データに「どの業種の、どのサイズの車両か」といった属性情報を掛け合わせることで、データの価値をさらに高める計画が進められています。来年度にはこの属性情報の運用を本格化させ、より深い洞察を提供することを目指しています。長年培った車載器の信頼性と最新のデータ分析技術を融合させ、同社はこれからもモビリティ社会の課題解決を牽引していくでしょう。

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