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2025年6月2日配信

カーナビからLBSプロダクト・サービスへのトランジション byパイオニア(株)

小川和也
(モビリティサービスカンパニーコンシューマプロダクトチーム シニアマネージャー 兼LBSプロダクト統括)

(所属や役職は配信当時の情報となります)

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パイオニアが拓く次世代モビリティ体験:位置情報サービスとビッグデータの融合戦略
音響メーカーとして名高いパイオニア株式会社(以下、パイオニア)。同社が今、長年培ってきた技術と経験を活かし、モビリティ分野における位置情報サービスのリーディングカンパニーとして新たな価値創造に取り組んでいます。ポッドキャスト「ロケーションウィークリージャパン」に同社の小川武司氏(モビリティサービスカンパニー プロダクトマネジメント部 部長)が登壇し、その戦略と未来展望について語りました。本記事では、その内容を基に、パイオニアの位置情報ビジネスの最前線をご紹介します。

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音響からモビリティ体験創造企業へ:パイオニアの現在地とLBS戦略のキーマン

 

1938年にスピーカー開発から始まったパイオニアは、ホームオーディオからカーエレクトロニクスへと事業領域を拡大し、現在はオートモーティブを軸にサウンド、マルチメディア、そしてロケーションサービスを展開する企業へと進化を遂げています。

小川氏は、パイオニアが市販初のGPSカーナビゲーションシステム「AVIC-1」(キャッチコピーは「星は、道に聞け。」)を発売した1990年に入社。

その後、カーナビ用地図製作の草分けであるインクリメントP株式会社(現ジオテクノロジーズ株式会社)に15年間在籍し、地図データ事業にも深く関わってきました。現在はパイオニア社内で、スマートフォン向けナビアプリ「MapFan(旧コッチ)」やバイク向けナビアプリ「MOTTO GO(モットゴー)」、さらにはそれらの基盤となるAPI/SDK、法人向けホワイトレーベルソリューションなど、LBS(Location Based Services)関連プロダクト全体を統括しています。まさに、パイオニアの位置情報ビジネスを牽引するキーマンと言えるでしょう。

カーナビ市場の変革期:パイオニアが描く「デバイス×サービス」の未来図

 

カーナビゲーション市場は大きな変革期を迎えています。

かつては専用機が主流でしたが、スマートフォンの普及と共に高機能なナビアプリが登場し、Googleマップのような無料サービスも一般化しました。さらに近年では、スマートフォンと連携してナビ機能などを利用する「ディスプレイオーディオ」が急速に普及。

海外では既に主流となっており、日本国内でも今後5年、10年でこの流れが加速すると小川氏は予測します。

このような市場環境の変化に対し、パイオニアは「物(デバイス)」と「こと(サービス)」の連携を強みとして打ち出します。

単に高機能なアプリを提供するだけでなく、車両に搭載されたセンサー等と連携することで、スマートフォン単体では得られない高精度な位置情報や車両データを収集。これを活用することで、より付加価値の高いナビゲーション体験や新たなサービスの創出を目指しています。

実際に、パイオニアはアフターマーケットのディスプレイオーディオ市場で既に高いシェアを獲得しており、将来的には自動車メーカーへのOEM供給も視野に入れています。

「MapFan」からAPI、ビッグデータまで:パイオニアの多角的なLBS展開

 

パイオニアが提供する位置情報ソリューションは多岐にわたります。

 

  • コンシューマー向けナビアプリ:
    「MapFan(旧コッチ)」はダウンロード数約100万(2025年5月時点)。きめ細かい音声案内や、CarPlay/Android Autoへの対応が特徴です。「MOTTO GO(モットゴー)」: バイク専用ナビアプリ。ダウンロード数約20万(2025年5月時点)。
     

  • B2B向けソリューション:
    ホワイトレーベル提供: 「MapFan」をベースに、他社ブランドでのナビアプリ提供を可能に。既に自動車メーカーでの採用実績もあります。
     

  • API/SDK提供:
    パイオニアが長年培ってきたルーティングエンジンや検索エンジンなどの機能をAPI/SDKとして外部提供。これにより、他社は信頼性の高いナビゲーション機能を自社サービスに容易に組み込めます。
     

  • ビッグデータ活用:
    カーナビやスマートフォンアプリから収集したプローブデータを活用し、独自の高精度な渋滞情報を生成・提供。この技術は、東日本大震災の際に「通れた道マップ」として提供され、社会貢献にも繋がりました。

これらのビッグデータは、新たなサービスの開発や異業種との連携に活用されています。

 

異業種連携で新価値創出へ:パイオニアが目指す「未来の移動体験」


パイオニアは、蓄積したビッグデータやAPI/SDKといったアセットを活用し、自動車業界に限らず、観光分野など多様な業種のパートナー企業との連携を積極的に模索しています。

小川氏は、「どんな業種でも構わない。一緒に新しい価値を創造できるパートナーを探している」と語ります。

 

同社のミッションは「より多くの人と感動を、未来の移動体験の中で作っていく」こと。

その実現に向け、デバイス(カロッツェリア製品、OEM供給品)とサービス(アプリ、API、ビッグデータ)を高度に連携させ、ユーザーにとってより安全・快適で、感動を伴う移動体験の提供を目指しています。

 

◾️まとめ

 

音響メーカーとしてのDNAを受け継ぎながら、カーナビゲーション黎明期からの深い知見と技術力を武器に、パイオニアは総合的なLBSプロバイダーへと進化を続けています。

変化の激しいモビリティ市場において、「デバイスとサービスの連携」、そして「ビッグデータを活用したパートナーシップ戦略」を軸に、新たな移動体験の創造に挑む同社の取り組みは、位置情報データ活用の未来を考える上で非常に示唆に富んでいます。今後の展開から目が離せません。

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