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エムディー株式会社の設立背景と2つの事業軸

 

エムディー株式会社は2018年10月に設立された企業で、現在は約69名の従業員を擁しています。同社は大きく分けて2つの事業を展開しています。1つ目はメディカル事業で、開業を目指す医師や歯科医師へのコンサルティングを行っています。物件の調達から内装工事のディレクション、さらには複数の診療科目を誘致するメディカルモールの運営まで、開業後の支援を含めた一気通貫のサービスを提供しているのが特徴です。特に、集客力のある大手デベロッパーの商業施設内にクリニックを誘致することに独自の強みを持っています。

2つ目の柱が、橋本氏と逸見氏が所属するAIデジタル戦略事業です。ここでは、証券分析とAIによる売上予測を可能にするSaaS型プロダクト「gleasin(グリーシン)」の開発・提供を行っています。この事業は、代表の伊東氏が抱いていた「成功する店舗とそうでない店舗の最大の要因は場所にある」という信念から生まれました。医師が最適な場所で開業できるように支援するための専門ツールが必要だという考えが発展し、現在の汎用的な店舗出店支援ツールへとつながっています。

 


次世代の店舗開発を支えるgleasin(グリーシン)の機能

 

gleasin(グリーシン)は、2025年3月から全国展開が開始されたSaaSプロダクトです。このツールは大きく分けて2つのプランで構成されています。まず「ベーシックプラン」は、一般的なGIS(地理情報システム)ツールとしての機能を備えています。国勢調査や経済統計などのオープンデータをユーザーが扱いやすい形で可視化しており、地図上にピンを落とすだけで、そのエリアの人口構成や世帯属性、ターゲットの居住状況などを瞬時に把握することが可能です。

その上位モデルとして提供されているのが「AI売上予測モデル」です。これは昨今の生成AIとは異なり、機械学習型のAIを活用したものです。顧客が保有する過去の売上データや出店傾向、店舗のフォーマットをAIに学習させます。これにより、AIが売上に影響を与える複数の相関情報を多角的に分析し、新たな出店候補地においてどれほどの売上が見込めるかを高い精度で算出します。従来のハフモデル分析や重回帰分析では困難だった、複雑で複合的な要素を瞬時に計算に盛り込める点が、AI化による最大のメリットといえます。

 


属人化した経験を「ポータブルスキル」へ転換する

 

店舗開発における大きな社会課題の一つに、出店判断の属人化があります。昭和から平成にかけての店舗開発は、社内のプロフェッショナルが持つ長年の経験と勘に依存する部分が大きくありました。しかし、こうしたベテラン層の高齢化や引退が進む中で、その貴重なスキルをいかに次世代へ引き継ぐかが喫緊の課題となっています。個人のスキルはそのままでは他者に移転することが難しく、組織に蓄積されにくいからです。

エムディー株式会社では、この熟練者の経験をAIに学習させることで、スキルのクローンに近いものを作り出し、組織全体の「ポータブルスキル」へと変換することを目指しています。また、現代の令和という時代においては、インバウンド需要や社会情勢の急激な変化により、過去の経験則だけでは通用しない場面も増えています。AIを用いることで、人間では処理しきれない膨大な外部環境の変化をデータとして取り込み、より客観的で再現性のある出店戦略を構築することが可能になります。

 


説明可能なAIがもたらす意思決定の透明性

 

gleasin(グリーシン)が提供するAIモデルの大きな特徴は、ブラックボックス化しない「説明性がつく売上予測」である点です。一般的なAIの中には、なぜその結果が出たのかというプロセスが不透明なものも少なくありませんが、同社のモデルは売上予測の根拠となる要因や相関関係を明確に示します。

これにより、店舗開発の担当者は経営層に対して、なぜこの場所への出店が有望なのかを、納得感のあるデータを持って説明できるようになります。このツールは新規出店だけでなく、既存店のリニューアルや、経営判断として非常に難しい閉店、移転の際の判断材料としても活用されています。最終的な出店判断を下すのはあくまで人間ですが、AIはその判断を最も強力にサポートし、確かな成功体験を作るためのパートナーとして位置づけられています。

 


多様な業態での活用と今後の展望

 

gleasin(グリーシン)の活用シーンは、飲食業にとどまらず、ピラティススタジオ、フィットネスジム、アミューズメント施設など多岐にわたります。例えば、大阪を拠点とするピラティス運営企業が関東へ進出する際、土地感のないエリアでの出店を机上で分析し、実地調査とすり合わせることで成功に導いた事例があります。また、標準機能として搭載されているGPSデータ(人流データ)を活用し、分析の精度を高めている企業も増えています。

エムディー株式会社が一般社団法人LBMA Japanに参画した理由は、まさにこの人流データのさらなる拡充と外部データの多様性を高めることにあります。今後はインバウンドに特化した集客予測や、医療分野における集患に紐づく情報など、より高度なロケーションビジネスの観点を取り入れたいと考えています。現在のツールを完成形とせず、業界内の企業と情報交換を行いながら常に進化させていく姿勢が、同社の強みとなっています。

 


まとめ

 

エムディー株式会社が提供するgleasin(グリーシン)は、店舗ビジネスにおける意思決定のあり方を抜本的に変えるソリューションです。メディカル事業で培った「場所が成功を決める」という知見をベースに、属人化した経験をデータ化し、誰もが活用できるスキルへと変える取り組みは、多くの企業の課題解決に直結します。

特に説明可能なAIとしての透明性は、社内合意形成を円滑にし、戦略的な店舗網の構築を支援します。今後はLBMA Japanなどのコミュニティを通じて外部データとの連携を強め、インバウンド対応やより詳細な予測モデルの構築など、時代のニーズに即した機能拡張が期待されます。出店による失敗を最小限に抑え、一店舗でも多くの成功店舗を生み出すためのキーサクセスファクターとして、同社のAIソリューションは店舗開発の新たなスタンダードとなっていくでしょう。

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