2024年12月16日配信
金城 陽平
株式会社ゼンリンデータコム 事業統括本部 サービス企画室長次
世代位置情報基盤が革新するマップAPI
(所属や役職は配信当時の情報となります)
株式会社ゼンリンデータコムは、ゼンリンのデータ配信事業の戦略子会社として2000年に設立されました。
ゼンリンが整備する詳細かつ膨大な地図データや道路ネットワークデータを活用し、
個人や法人向けに地図配信や経路探索エンジン、ナビゲーションサービス、API提供を行い、
GoogleマップのAPIサービス導入時には代理店としても活動しました。
そんな同社が次に見据えるのは次世代の配信基盤の構築です。
住所の表記ゆれを正規化する「住所クレンジング」、さらには「最適化したルート探索」などが可能となり
物流・インバウンドなど様々な面での課題解決に活用できるといいます。
次世代のマップAPIの可能性について、詳しく伺いました。
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位置情報分析の「先駆者」 膨大なデータを活用した地図APIサービス
株式会社ゼンリンデータコムは、ゼンリンのグループ会社として、2000年に設立されました。
ゼンリン本体が紙地図からデジタル地図データへの転換を進める中で、同社は地図データ配信の戦略子会社として誕生しました。
設立当初から、ゼンリンが整備する地図データや建物情報、道路ネットワークデータを活用し、
それらを配信する仕組みや、経路探索エンジンの開発を行ってきました。
個人向けの地図サービスだけでなく、法人向けのソリューション、
さらにはカーメーカーやカーナビメーカーに対するナビゲーション機能の提供など、幅広いサービスを展開しています。
また、地図APIサービスの分野においても長い歴史があります。
現在ではGoogleマップのAPIが広く知られていますが、その提供が始まる以前から、
ゼンリンデータコムはAPIサービスを展開していました。
この先駆的な取り組みは、Googleも参考にしたということに加え、Googleマップの公式代理店・カメラ営業なども担いました。
また、現在においてもGoogle Maps APIを提供する事業にも注力しており、
その中でゼンリンならではの強みを活かしつつ、柔軟な提案活動を展開しています。
蓄積された地図情報・位置情報、ビッグデータを収集・分析するなどして混雑統計データのサービス提供をはじめるなど、
まさに位置情報分析サービスの「先駆者」として地図API市場での確固たる地位を築いています。
そして現在、ゼンリンデータコムが注力しているのが、次世代の配信基盤の構築です。
ゼンリングループ全体が保有する膨大な地図データを、さらに進化させて活用するために、
住宅地図データ、自動運転用データ、ドローン用データなど、グループ全体で保有する多様なデータを集約、
新しい配信プラットフォームの構築に力を入れています。
この取り組みは約3年前に始まり、現在では基盤が稼働を開始し、実際に各種サービスの中で活用されています。
これにより、これまで要望の多かった細い道路の情報や、
ユーザーが必要とするデータだけを選択的に表示するなど、柔軟な制御も可能になりました。
まさに、新しい地図基盤が着実に社会実装されつつあります。
ゼンリンデータコムはCEATEC2024にも出展していましたが、
そこでは「神社仏閣マップ」といった、ゼンリングループが保有する約21万件の神社仏閣データを活用し、
神社仏閣だけを表示させるような地図サービスを紹介しました。
このサービスは訪日外国人観光客にも関心を持たれる可能性があり、観光促進の新たな手段として注目されています。
また、新たにリリースした「都市変遷マップ」は、ゼンリンが1994、95年ごろから保有する地図データをもとに、
都市の変遷や周辺環境の変化を視覚的に確認できます。
この過去地図を使ったサービスは、都市開発や地域研究など、さまざまな分野での活用が期待されています。
こうした次世代基盤を構築する上で強みとなっているのが、ゼンリングループが所有する膨大なデータです。
建物情報4000万棟、住所データ3000万件といった莫大な規模を誇り、
それを効率的かつ柔軟に配信するために次世代基盤を構築する取り組みを進めているといいます。
新たな基盤は、現行のシステムを利用している顧客が継続して利用できるだけでなく、
新規顧客にも対応可能な形でデータを提供することを目指しています。
このため、既存フォーマットを尊重しつつ、統一的なサービスフォーマットを作り直すことで、
柔軟性と互換性を兼ね備えた基盤を目指しています。
顧客がスムーズに移行できる仕組みを整えつつありますが、完全な切り替えにはまだ時間がかかる状況だといいます。
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次世代基盤で実現された「住所クレンジング」「最適巡回ルート検索」
ゼンリングループが進める次世代基盤の構築は、
APIの機能とデータ整備を大幅に進化させるものであり、幅広い業界や分野での活用が期待されています。
その一つが、住所クレンジングエンジンの強化です。
従来の課題として、不正確な住所や過去の住所、不動産業界における地番住所などを扱う際の精度の低さが挙げられていました。
次世代APIでは、新たに構築された「住所クレンジングエンジン」を活用することで、
誤った住所の正規化することが可能です。
また、座標情報以外にZIDといった、ゼンリン固有のパーマネントIDを付与、データ管理の効率化を実現することができます。
そして、もう一つが「最適巡回ルート探索エンジン」です。
物流業界においては、物流効率を大きく向上させることが可能だといいます。
このエンジンはゼンリングループの持つ詳細な建物出入口情報を活用し、配送時間の短縮やトラック台数の削減を可能にします。
その結果、燃料コストやCO2排出量の削減にも寄与し、人手不足が深刻化する物流業界の課題解決に大きく貢献します。
このシステムは「神社仏閣マップ」でも活用されており、
活用観光分野においても複数の観光地を効率よく回れるルートを提案できるため、限られた時間で多くの観光地を訪れることが可能に。
観光客の満足度が向上にもつながります。
また、自治体と連携し有名観光地への人の集中を緩和し、周辺の隠れた観光資源へ観光客を分散させる取り組みも進んでいます。
このような取り組みは、インバウンド観光の課題解決や、地域経済の活性化にもつながります。
ゼンリンデータコムではこうした観光・訪日外国人向けのサービス、そしてBtoCサービスを今後のキーワードにもちながら、
自社の基盤を外部パートナーにも提供し、他業界や他企業のサービス開発を支援していきます。
これからも次世代のIoTやAI、スマートシティの時代を支える重要なプラットフォームとしての存在感を高めていく。
ゼンリングループのデータ基盤と技術は、物流、観光、モビリティといった
多様な分野での課題解決と新たな価値創造を実現する可能性を秘めています。
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