2026年9月28日配信
トラックが走れば、経済が見える。50万台の商用車データ「ロジータ」が拓く未来
平野悟 日野コンピューターシステム(株)事業推進室 室長
(所属や役職は配信当時の情報となります)
今回のゲストは、日野コンピューターシステムの平野氏。トラック・バスから取得するコネクテッドデータを匿名化し、社会課題の解決に活用する「ロジータ」について伺います。日野自動車に加え三菱ふそうのデータも扱い、規模は約50万台へ。位置情報だけでなく、燃料消費量やエンジン回転数、安全装置の作動など、商用車ならではのデータから何が見えるのか。道路補修、雪道でのスタック検知、災害時の「通れた道」、物流DXや2024年問題への対応まで、24時間走り続けるトラックのデータが、日本の物流・交通インフラをどう変えていくのかを深掘りします。
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日野コンピューターシステムの概要と商用車ビッグデータ「ロジータ」の誕生
株式会社日野コンピューターシステムは、日野自動車の100%子会社であり、グループ全体のIT部門としてシステム開発・運用を担う企業です。同社は「人流と物流の課題をデジタルの力で解決する」というパーパスのもと、運送事業者向けDX支援や商用車データの利活用を推進しています。 その核となる取り組みが、トラックやバス等の商用車データを提供するプラットフォーム「ロジータ(Logita)」です。車両製造時に搭載された通信機から送られる走行データを匿名化し、社会課題の解決に役立てています。 データは生データ、分析レポート、リアルタイムAPI、ダッシュボード閲覧の4形式で展開され、自治体や建設コンサルタント、地図事業者等に活用されています。
50万台規模へ拡大:日野自動車と三菱ふそうのコネクテッドデータ統合
ロジータが扱うデータはメーカーの枠組みを超えて規模を拡大し、国内最大級の商用車ビッグデータへと進化しています。 2024年7月からは従来のデータに加え三菱ふそうトラック・バスのデータも扱えるようになり、対象車両数は約50万台へ達しました。 車両からは位置情報や日時に加え、エンジンのオン・オフ、車速、エンジン回転数、燃料消費量といった動体情報が取得されています。 さらに、ABSや衝突被害軽減ブレーキ(PCS)の作動ログ、駆動輪の空転を示すASRデータなど、商用車特有の挙動もリアルタイムに把握可能です。
商用車データの特質:乗用車との違いと24時間365日稼働の強み
商用車から得られるデータは、一般的な乗用車とは大きく異なる独自の強みを持っています。 乗用車の1日平均走行距離が約12キロにとどまるのに対し、トラックは1日平均250キロ以上と20倍以上走るため、道路網の網羅的なデータを収集できます。 また、トラックは定期便を含め24時間365日フル稼働しているため、夜間も含め時間帯を問わず安定したデータが得られます。 ごみ収集車や冷凍車、ダンプカーといった車種ごとの動きを捉えることで、日本全体の各産業の動向をリアルタイムに可視化できます。
活用事例:建設コンサル・道路補修・雪道スタック検知と安全装置ログ
ロジータのデータは、建設コンサルタントや自治体などのインフラ維持管理や計画策定に幅広く活用されています。 大雪時における道路のスタック(立ち往生)の解析では、大型トラックの空転を示すASR発砲ログを解析して危険箇所を特定しています。 このほか、道路補修の優先順位判断、リアルタイムの動体管理サービス、水素ステーションの最適立地分析レポートなど、多彩なソリューションを展開しています。
災害対応:「通れた道マップ」による迅速な支援とインフラ復旧
地震や大雨などの自然災害において、商用車データは被災地支援やインフラ復旧に不可欠な役割を果たしています。 災害時に乗用車が通行できても大型トラックが通れなければ支援物資を届けられないため、正確な通行実績の把握が重要となります。 同社では大規模災害発生時、大型トラックが実際に走行できたルートを可視化した「通れた道マップ」を日次で公開しました。 走行可能な道路を示すことで不要な引き返しを防ぎ、迅速な物資輸送と地域復旧をバックアップしています。
物流2024年問題へのアプローチと運送DXによる作業効率化
物流業界が直面するドライバー不足や労働規制といった「2024年問題」に対し、同社はデータ活用と運送DXの両面からアプローチしています。 走行データ分析を通じ、運送ルートの効率化や稼働実態に応じた改善提案を実施しています。 また、法改正で認められた自動点呼システム(ロボットやPCを活用した遠隔点呼)など、現場の負担を軽減するDX商材の導入も支援しています。 データの精度向上と現場作業の自動化を組み合わせ、法令遵守と生産性向上を両立させた持続可能な物流体制の構築を後押ししています。
まとめ
日野コンピューターシステムが提供する商用車データプラットフォーム「ロジータ」は、日野と三菱ふそうのデータを統合した50万台規模のビッグデータであり、日本の社会インフラを支える重要基盤となっています。24時間365日走り続けるトラックの走行軌跡や挙動データは、産業動向や道路環境を映し出す「経済の鏡」と言えます。
道路補修の最適化、雪道スタック検知、災害時の「通れた道マップ」、さらには水素ステーション立地分析や物流2024年問題への対応まで、ロジータのデータは多様な社会課題の解決に貢献しています。今後は狭小道路進入リスクの特定や危険個所の安全対策など、都市計画やインフラ維持管理への応用が更に期待されます。
正確なデータをベースにした持続可能で安全・効率的な物流・交通社会の実現に向けて、ロジータが果たす役割は今後ますます大きくなっていくでしょう。
