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2025年7月22日配信

位置情報データの無限の可能性:リアルと未来をつなぐデータ活用術  byブログウォッチャー

プロダクト開発統括ユニット データサイエンティスト 橘 航大

(所属や役職は配信当時の情報となります)

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2024年6月26日に開催された、LBMA Japan主催、「データがつなぐ地域の未来」をテーマに掲げた「上越アニバーサリーイヤー・位置情報利活用セミナー@上越妙高」。本セミナーでは、位置情報データを活用した地域活性化の可能性について深く掘り下げられました。

各セミナーで語られた内容をご紹介します。

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ブログウォッチャーが拓く位置情報データの新境地

 

ブログウォッチャーは、2007年にリクルートとゼンリンのジョイントベンチャーとして設立された企業です。元々はブログ情報をウォッチしていましたが、現在はスマートフォンアプリから位置情報を取得するSDK(ソフトウェア開発キット)を提供し、そのデータを活用して広告配信、分析、街づくり、観光推進などを行っています。

ブログウォッチャーが扱う位置情報データは、交通渋滞対策、スマートシティ構築、公共交通最適化、都市開発におけるデータドリブンな意思決定、さらには防災対策(能登半島地震の事例分析など)といった幅広い分野で導入実績を誇ります。

橘氏は、人流データの最大の魅力は「唯一オフラインの動きを鮮明に捉えられるデータであること」だと強調します。SNSなどのオンラインデータが「誰がいつ何をしたか」を明確にする一方で、人流データは「どこで」という情報を詳細に把握できる唯一のデータであり、数メートルから数十メートル単位の精度で、最大1億MAU(月間アクティブユーザー)を超える大規模なデータを取得しています。

 

豊富な活用事例で見る位置情報データのインパクト

ブログウォッチャーの提供する位置情報データは、すでに様々な成功事例を生み出しています。

・デジタル観光統計: 全国各地の観光地における来訪者数、来訪者の居住地、年齢層、性別、周遊ルートなどを横断的に分析することが可能です。これにより、観光地の変動要因の把握、ターゲット層の明確化、自地域の強み・弱みの特定などが行え、効果的な観光施策立案に貢献しています。実際に、導入企業からは「来訪者が来訪前にいた場所や居住エリアが一目でわかるようになり、施策に活かせる」と高い評価を得ています。

 

・イベントによる経済効果分析:
大河ドラマの聖地巡礼効果: 大河ドラマの放送が、舞台となった京都市、大津市、越前市への観光客数に与える影響を分析した事例です。特に女性主人公のドラマでは20代女性の来訪者が増加し、ドラマ関連施設だけでなく、通常は観光スポットではない越前の地域にも、ドラマをきっかけに多くの人が訪れていることがデータで明らかになりました。

 

・人気アーティストのライブ経済効果: 韓国の人気ユニットTWICEのライブ開催による経済効果を分析した事例では、1回のライブで約2.3億円の経済効果(新幹線移動費、飲食費、宿泊費などを含む推定)が生み出されていることが示されました。人流データによって、ライブ参加者の居住地から推定される移動手段や、ライブ前後の消費行動パターンを把握できるため、イベントによる地域経済への波及効果を可視化できます。

 

未来を拓く最先端の取り組み

 

ブログウォッチャーは、静的なデータ分析だけでなく、人々の動きをリアルタイムにシミュレーションする研究開発にも力を入れています。

 

・アズビルートスタジアムの歩行者シミュレーション: サッカーの試合終了後、スタジアムから最寄り駅へ向かう人々の動きをシミュレーションする事例です。人流データを基に、どこが混雑しやすいか、どのルートが効率的かなどを可視化することで、最適な歩行者動線の設計や混雑緩和対策に貢献します。道路の混雑状況を色で表示するヒートマップにより、誰が見ても直感的に状況を把握できるため、都市計画や交通規制の策定に役立ちます。

・地震発生時の人流データ分析: 能登半島地震発生時の人流データを分析し、緊急車両の動きや被災者の居住地パターンを把握する研究も行っています。地震発生直後の人流密度の変化や、被災地への流入・流出パターンを可視化することで、災害時の避難経路の最適化や支援物資の輸送ルートの検討など、今後の防災対策への応用が期待されます。

まとめ

位置情報データは、私たちの日常生活の「どこで」を可視化し、多種多様な社会課題の解決や新たな価値創造に貢献する可能性を秘めています。ブログウォッチャーの取り組みは、観光戦略の高度化、イベントの経済効果の最大化、都市計画の最適化、さらには防災対策の強化といった分野で、その有効性を示しています。

まだ発展途上の分野であり、活用には発想力と試行錯誤が求められますが、位置情報データの力は、リアルな社会の動きを理解し、より良い未来をデザインするための強力なツールとなるでしょう。今後、さらなる技術革新と多様な分野での活用が期待されます。

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