2026年8月31日配信
人流データが変えるまちづくりの未来ー「誰でも使える分析」へ
樋田 英能 (株)GEOTRA プロダクトマネージャー (PdM)
(所属や役職は配信当時の情報となります)
株式会社GEOTRAの樋田英能氏を迎え、人流データ活用の最新動向を伺いました。三井物産とKDDIのジョイントベンチャーとして、位置情報データとAIを組み合わせた高度な分析や、まちづくり・都市計画への活用を推進するGeoTra。本エピソードでは、AIによる分析・レポート作成の進化、シミュレーション技術、自治体やデベロッパーとの最新プロジェクト、さらに個人情報に配慮した「合成データ」の可能性まで幅広く解説します。人流データを専門家だけでなく誰もが使いこなせる世界を目指すGEOTRAのビジョンと、今後2年間で位置情報ビジネスがどのように進化していくのかを語っていただきました。位置情報データやAI、スマートシティに関心のある方におすすめの内容です。
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三井物産とKDDIのJV「GEOTRA」の原点と合成データの強み
株式会社GEOTRA(ジオトラ)は、三井物産とKDDIのジョイントベンチャーとして2022年に設立されました。同社はGPSデータとAIを掛け合わせ、個人情報保護に配慮した「合成データ」の生成や高度な分析をまちづくり領域に提供しています。PdMの樋田英能氏はKDDIで位置情報サービス企画に携わった後、2022年から参画しています。当初数名だった組織は現在数十人規模へ急成長し、デベロッパーや建設コンサルタント、大学等と連携して実績を積んでいます。現在は人流分析に加え、踏み込んだシミュレーションなどの取り組みも順調に拡大させています。
『人流ビッグデータ活用入門』の出版背景と現場の疑問
コロナ禍で注目された人流データですが、実務現場では「面白いが実際の業務への使い方が分からない」との声もありました。そこでGEOTRAは、業界全体の共通理解や自社メンバーの体系的学習を目的とし、『まちづくりのための人流ビッグデータ活用入門』という書籍を出版しました。本書では人流データのコスト構造や、実際の人口統計との乖離原因、その克服アプローチなどを解説しています。さらに、実際のまちづくりの現場における具体的な顧客事例や分析ポイントを「取り扱い説明書」のようにまとめることで、データの普及をポジティブに推進しています。
生成AIが革新する人流分析:プロンプトによる示唆抽出と効率化
近年のAI技術の進歩は、GEOTRAが提供するツールの操作性と社内の開発効率の両面に大きな変化をもたらしています。従来はCSV等で提供されていたデータに対し、ユーザー自身がプロンプトを入力することで、簡単な集計やレポーティングを瞬時に完了できるようになりました。これにより、データから有益な示唆を得るまでの時間が大幅に短縮され、業務効率化が実現しています。また、出店分析などの実務フローに沿ってAIを活用する「AIイネーブルド」なプロダクト開発も進んでおり、プロセス全体を簡素化する取り組みが活発化しています。
まちづくりにおけるEBPMの加速と伝統的な統計調査の補完
都市再開発や交通、防災などのまちづくり領域では、客観的なエビデンスに基づく「EBPM」の気運が高まっています。従来は「パーソン・トリップ調査」や国勢調査がメインでしたが、これらを人流ビッグデータで代替・補完する動きが広がっています。実際、自治体の道路企画などの伝統的な部署と共同で、ビッグデータと現実の状況を比較検証する厳しい精度検証を行い、実務への適用に成功するプロジェクトも増えています。この動きに伴い、実務を担う建設コンサルタントからの問い合わせも急増しています。
労働力不足に立ち向かう人流データの網羅性と即時性
深刻な人材不足は、人手や高コストに依存する従来の交通量調査の実施を困難にさせています。例えば、パーソン・トリップ調査は10〜15年に一度しか実施できない地域もあり、地方などでは交通の基礎情報そのものが不足する課題があります。これに対し、GPSベースの人流ビッグデータは毎日自動蓄積されるため、調査の手間や人件費を大幅に削減できます。さらに、アンケート調査に生じがちな漏れを補い、広域の移動状況を網羅的かつ即時的に捉えることで、高い精度で地域の実態を可視化します。
GEOTRAが描く未来:GEOTRA SNAPと合成データの強化
GEOTRAは、これからの2年間における展開として2つの方向性を掲げています。1つ目は、データの扱いが難しいと感じる顧客のハードルを下げるために、分析ノウハウを反映させた「GEOTRA SNAP」を展開し、意思決定の迅速化を支援することです。2つ目は、独自の「合成データ生成技術」をさらに強化し、GPSだけでなく車の位置情報や決済情報など、多様なビッグデータソースをデータサイエンスの力で統合し、個人情報を守りつつ最も確からしい「最強のデータ」を構築することです。
まとめ
株式会社GEOTRAが推進する人流データ活用は、高度な都市分析を一部の専門家だけのものではなく、誰もが直感的に意思決定に活かせるインフラへと進化させています。三井物産とKDDIの基盤、高度な合成データ生成技術、そして生成AIを組み合わせることで、個人情報を守りながら日々の詳細な活動や交通実態を可視化しています。
人手不足や予算制限に悩む自治体やデベロッパーにとって、即時性と網羅性を兼ね備えたビッグデータはEBPM推進に不可欠です。意思決定に集中できるツールの提供や複数データの統合という将来像は、効率的なまちづくりを劇的に加速させるでしょう。
