2024年7月8日配信
松岡 一久
一般社団法人 国際文化都市整備機構 理事
ソフト・ハードで創る、魅力的なまちと価値の可視化
(所属や役職は配信当時の情報となります)
2016年に設立された一般社団法人国際文化都市整備機構(FIACS)。
約40社のまちづくりに関わる事業関係者が参加し、まちを「ハード面」「ソフト面」から研究しています。
FIACSが目指すのは「共創」型のまちづくり。
そこで開発したのが、まちの魅力を従来とは異なる視点から可視化した「エリアクオリア指標」です。
「まちづくりのカルテ」ともなるこの指標。
今後は、郊外都市など様々なまちのあり方に合わせたものも開発中だといいます。
まちの魅力を可視化し、いずれはまちを“コンテンツ化”したい。
都市開発、観光、マネタイズなど様々なお話を聞かせて頂きました。
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まちづくりのカルテ「エリアクオリア指標」
一般社団法人国際文化都市整備機構(FIACS)は、2016年に設立された都市開発事業者による研究会です。
FIACSはもともと、北山創造研究所の一部門として複合商業施設のプロデュースを行っていました。
しかし、事業の増加に伴い、建設建築や都市計画の分野だけでなく、マーケティングやコミュニケーションなど、より幅広い分野の知見が必要とされることから新会社として設立されました。
現在、加盟しているのはデベロッパーやゼネコンなどのハード系企業と、エイベックスや角川アスキーなどのソフト系企業など約40社で、互いに協力しながら次世代のまち作りを模索しています。
FIACSの特徴は主に2つあります。ひとつは、都市間のネットワークを活用した価値創造です。
例えば、東京と軽井沢、東京と鎌倉などを結びつけ、新たな都市の魅力を引き出す方法を探求しています。
もうひとつは、毎年設定したテーマに基づき都市の魅力を検討することです。
そしてFIACSが今、取り組んでいるのは「エリアクオリア指標」の展開です。
エリアクオリア指標は、まち作り事業者が都市を開発する上での指標として開発されたもので、いわば「まちづくりのカルテ」の役割を果たすといいます。開発の背景には、コロナ禍で魅力的なまちの「本質」を再考した結果、就学者や居住人口の多さではなく「まちのファン」が多いことにあるとの結論に至ったことがあります。エリアクオリア指標は、KDDIの人流データ、角川アスキー総研の口コミデータ、オープンデータの統計データを組み合わせて算出されており、まちの多面的な情報を発信することが可能です。
また、都市全体ではなく、駅単位で街の特徴を数値化できるため、地域ごとの具体的な魅力を測ることができ「まちのファン」作りに役立つといいます。
都市開発事業者にとっては、これまで都市の魅力を示す材料として使われていた「投資競争力ランキング」や「住みたい街ランキング」では、開発の“次の一手”を見いだしにくいという意見があったといい、その点エリアクオリア指標は駅単位など狭い範囲で街の特徴などを数値化できるため、こうした問題の解決にもつながるといいます。
今後は都市型と郊外都市とまちの形に併せてデータの組み合わせを変えるなど、改善を加えて、様々なまちの魅力を数値化することを目指しています。郊外都市に関しては「住みやすい」だけではなく「人生を豊かにする」・・・例えばまちの中に交流できる施設が整っているなどを人流データを利用して数値化することなどを検討しています。
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まちは「集客」の場所だけではなく"コンテンツを生み出す”場所に
さらに、エリアクオリア指標は「観光」をより向上させることにも活用できるといいます。
FIACSでは今後はメタ観光推進機構と連携して、従来の名所旧跡やグルメだけでなく、個人の興味を基にした観光を重視する取り組みをはじめます。例えばアニメの聖地巡礼やアート鑑賞、シビックプライドを感じられるスポットなど、様々な観光資源を見直すことで、街の魅力を高めることを目指しています。
立ち上げから8年目に入り、中央官庁から相談されることも増えてきたといいます。中でも、昨年度文科省と行った、文化施設のコンセッション研究では文化施設の収益構造を高めるアイデアを提案し、高い評価を得ました。
今年度は文化施設を中心にしたエリアマネジメントの共同研究を行う準備もしているといいます。
いずれはまちが「集客」するのもではなく、コンテンツを生み出す場所になる、世界中にまちのファンを生み出す。
様々なアイデアがありますが、課題となるのはマネタイズの問題です。
今後はLBMA Japanの事業者と「共創」することで、新たなまちの価値を生み出していきたいと話しました。
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#まちづくり#都市開発 #観光DX